【ハワイから講師を招聘】WRMA Brush Up Meeting 2023 powered by BWRAG

水上バイクを用いたレスキュー法の普及活動に加え、各種水上スポーツ競技会での警備や安全管理など、水上の安全啓蒙活動を幅広くおこなう一般社団法人ウォーターリスクマネジメント協会(WRMA)が、2023年9月11日(月)、12日(火)、13日(水)の3日間、千葉県市川市のMG MARINEを会場に『2023ウォーターリスクマネジメント・ブラッシュアップ・ミーティング』を開催しました。

今回のミーティングには、WRMAメンバーや公務救難機関の職員、さらにはプロウインドサーファーなど多彩な顔ぶれが参加。そして講師には、世界各国のビッグウェーブサーファーや公務救難機関、軍などに水上安全指導をおこなうビッグウェイブ・リスク・アセスメント・グループ(BWRAG)をハワイから招聘。彼らのテクニックだけでなく、水上安全管理に関する世界基準の考え方を学べる、貴重な機会となりました。

BWRAGチーフ・マスター・インストラクターのパット・チョン・ティム氏

初日11日は、CPR・AED講習。2日目が座学。そして3日目が午前中は座学、午後が実技というスケジュールで実施された今回のミーティングですが、座学で強調されていたのが危機に直面して行動する際は「Risk Taker(リスク・テイカー)」ではなく「Risk Technician(リスク・テクニシャン)」でありなさい、ということでした。

リスク・テイカーの直訳は「リスクを取るひと」。意訳すると「リスクにさらされるひと」でしょうか。その定義は〈勇気があり自発的で、目の前で起こる出来事に対し感情的に、反射的に動く人物〉です。

対するリスク・テクニシャンは直訳すると「リスク技術者」。意訳すると「リスクを扱えるひと」でしょうか。その定義は〈リスクを正しく評価するための教育を受け、経験を積み、計算しながら行動できる人物〉です。

このリスク・テクニシャンに求められるスキルを身につけるためのメソッドのひとつとして『エマージェンシー・アクション・プランニング(EAP)』の作成というカリキュラムが用意されていました。ミーティング参加者が3班に分かれ、実在の場所にどのような危険因子があるのかをあぶりだし、それによりどのような事故が起こりうるのか、そしてそれぞれの事故対応について各自の役割も含めてプランを決め、発表するというものです。

このように、あらゆる場面を想定しておくことで、人員や機材の手配ができ、心構えや準備ができます。もちろん、実際の現場では想定外の事態も起きますが、その因子を加えて新たにEAPを練り直すことができます。この地道な作業を繰り返す勤勉さも、リスク・テクニシャンに求められるスキルです。

Rescue Training

午後からの実技では、水上での意思疎通を図るためのハンドシグナルや、レスキュアーや要救助者のピックアップを実演。波が高く、高速で長距離の移動が必要となるハワイでは、スレッドに乗せた要救助者のホールドの仕方が日本とは違うことなども紹介されました
サーフボードを回転させて要救助者をボードに乗せる手法や、オーストラリア式の足でフックする手法など、状況に応じて使い分けられる技術が紹介されていました
頸椎損傷の恐れがある要救助者の頭を固定したまま、スレッドから起こして搬送するテクニックも披露されました

BWRAGの公式サイトには、こんな言葉がトップページに掲げられています。

『Safety does not exist until you create it.』

意訳すると、「自分で作らなければ、安全はない」となります。

これは、危機に無為無策で反射的に飛び込んではいけない。あらゆるリスクを正しく評価し、自身の知識・経験・技術・機材に照らし合わせて対応できるか計算し、安全と判断してから行動しなさいということです。

仲間のビッグウェーブサーファーの悲劇的な死をきっかけに設立されたというBWRAG。悲劇を繰り返さないためにも、水上の警備・救命チームだけでなくプレーヤーにも『Safety does not exist until you create it.』の意識を伝えていました。

ミーティングの講師陣。左から堀江 拓(BWRAG)、ジョン・パング(BWRAG)、今西〝海〟淳樹(WRMA理事長)、ヴァンス・ライム(BWRAG)、そしてBWRAGチーフ・マスター・インストラクターのパット・チョン・ティム

今回のミーティングでの学びについてWRMAの今西理事長は「我々の講習は、水上バイクでのレスキュー手法のテクニックなど技術が中心でしたが、今回は水に入る前の心構えというか、ベースとなる考え方を改めて学ぶことができました。BWRAGから受け取った知識を、日本でも多くのひとに伝えていきたいと思います」

ミーティング終了後は、全員が輪になっての〝ポハク〟セレモニー。中央のパットさんから参加者がポハク(石)を受け取り、ミーティングの感想を述べながらポハクに想いを込めていきます。BWRAGメンバーと参加者の想い、そしてパワーが込められたポハクは、WRMA事務局の石橋祐太さんに託されました(写真左下)。最後は受講者全員に、ティムさんから修了証が手渡されました

ウォーターリスクマネジメント協会 https://pwcr-wrma.org/
BIG WAVE RISK ASSESSMENT GROUP https://www.bwrag.com/
MG MARINE https://www.mgmarine.co.jp/

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