元世界チャンピオンが手がけた映画
往年のジェットスポーツファンなら、「ラリー・リッペンクロウガー」と聞けば懐かしく思うことでしょう。
1980年代に4度の世界チャンピオンに輝き、ジェットスポーツ界を席巻したレジェンドライダーですが、そんな彼がなんと映画を製作。
しかもタイトルが「HOT WATER」とあっては、我々も黙っていられません。浅からぬ縁を勝手に感じつつ、すぐさまラリーにコンタクト。
映画のことはもちろん、誰もが知っているようなハリウッド映画のスタントマンとして活躍したキャリアについても話を聞くことができたので、最後までお楽しみに!
映画のようにドラマチックだった当時のレースシーン
私がジェットスキーでレースをしていたころは、ツアー中によく面白いことが起こっていて、それを「まるで映画のワンシーンだ」と言っていたんだ。それがジェットスキーの映画を撮りたいと夢見るようになったきっかけで、およそ20年後にようやく実現することができたよ。
HOT WATER:The Movieは「夢を追いかける」というテーマで、80年代のアクションコメディを彷彿とさせるような内容になっているんだ。良いアクションに魅力的なキャラクター、そしてラブストーリーもあり、シリアスなシーンもある。最後のビッグレースはみんな手に汗握るんじゃないかな。
ワールドファイナル(アメリカで開催される世界大会)の会場でも撮影したそうですね。
IJSBAがワールドファイナルの1週間前にレースコースでの撮影を許可してくれたので、そこで多くのレースアクションを撮影できたよ。あとはワールドファイナルの期間中に本物のジェットスキーレースや観客がたくさんいるメインスタンドとか、本物のファンがいるビーチでも撮影したよ。おかげで素晴らしいシーンが撮影できたね。
撮影のロケ地はレイクハバスシティ(ワールドファイナルの開催地)が中心ですか?
そうだね、映画のほとんどをレイクハバスで撮影したよ。海でのレースシーンはフロリダとカリフォリニアまで出向いたけどね。
クリス・マックルゲージとマーク・ゴメス(ともにジェットスポーツの元世界チャンピオン)も撮影に参加したようですが、彼らはどのような役割だったのでしょうか?
クリスはメインキャストのひとりである、ビリー・バーネット役のグレン・マックエンのスタントをお願いしたんだ。マークもスタントだね。序盤にビリーがフリースタイルスキーをプールでクラッシュさせるシーンがあるんだけど、それをマークにお願いしたんだ。あとは本人役としても登場しているよ。
この映画を撮影するうえで、苦労したことを教えてください。
そんなの、すべてが大変だったよ! 制作資金を集めるのも苦労したし、すべての俳優やクルー、その他もろもろのことを加味してスケジュールを組むのにも頭を悩ませた。悪天候で撮影が思うように進まないこともあったからね。撮影中は毎晩3時間ぐらいの睡眠で必死に頑張ったよ。
すでに色々な媒体でストリーミング配信がはじまっているんだけど、日本からだと「
Vimeoオンデマンド」で観られるから、是非日本のジェットスキーファンにも観てもらいたいね。
水上から銀幕の世界へ。ラリーの華麗なる転身
あなた自身も長年スタントマンとして様々な映画に携わってきたそうですね。映画業界へ足を踏み入れたのはいつごろですか?
最初にスタントマンとして出演したのは、1994年にアメリカで公開された「ウォーターワールド(ケビン・コスナー主演)」。もう30年近くになるね。
幼いころからスタントマンになることを夢見ていたんだ。それが叶えられたことは、本当に幸運なことだと思っているよ。
水上バイクで世界チャンピオンになった経験は、スタントマンになったあとも活かされていますか?
実は最初に出演した映画「ウォーターワールド」の時なんだけど、スタントコーディネーターがジェットスキーに乗れるハリウッドのスタントマンを片っ端からオーディションしていたんだ。
水上バイクに乗れる、となると人選が難しそうですね。
そうだったみたい。そして幸いなことに、私の2人の友人がそれを聞きつけてね。コーディネーターに私のことを勧めてくれたんだ。
それで彼から「オーディションを受けてみないか」と電話がかかってきて、私はロサンゼルスに行き、そこで晴れてスタントマンになれたんだよ。ジェットスキーに乗っていなければ、幼いころの夢は叶っていなかったかもしれないね。
正確にはわからないけど、おそらく100本以上はスタントとして出演しているんじゃないかな。ハリウッドで最高のスタントチームのひとつである「Brand X」のメンバーになれたことが幸運だったね。
その100本以上ある出演作のなかで、印象に残っているのは?
数え切れないぐらいあるけど、日本のみなさんも知っているような有名な映画だと「タイタニック」とか、「マトリックス リローデッド」とか。
あとは「アイアンマン」の1と2、「アベンジャーズ」、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー2」、「ワイルドスピード」の2と5とかかな。
そしてもっとも思い入れがあるのは、ブルース・ウィリスのスタントとして出演した「ダイ・ハード」の4と5だね。
打撲とか骨折は数え切れないけど、最悪の事故が起こったのはダイ・ハード4。私はブルースのスタントを務めていたんだけど、とあるシーンで約5mの非常階段から落下したんだ。
顔が潰れ、頭蓋骨や手首を骨折し、全身が粉々になったみたいだった。今生きていられることが、本当に幸運だと思えるほどの大きなアクシデントだったよ。
私は日本が大好きなんです。日本のジェットスキーのレースに出場したことは、今でもお気に入りの思い出として記憶に残っています。日本人はいつも親切で、広い心で私と接してくれました。そのころに出会った当時の全日本チャンピオン、前田一龍は今でも私の親友です。そして日本でもいつか映画を撮影したいですね。もしHOT WATERの続編があれば、次は日本で撮影しましょう!
HOT WATER:The Movie