K38 JAPAN
2008年4月に発足。米国に本部を置くK38の日本支部として、各地で水上バイクによる安全運航および救助・操船技術講習会や、マリンスポーツイベントにおける安全管理などを通じて、水上安全の普及・啓発活動を行っている。
前回もお伝えしたとおり、2022年は例年よりも多くの水難事故が発生しているわけですが、ご存じのとおり海上における事故は救助機関が到着するまでに時間が掛かります。
陸上では救急車の現場到着が平均8.9分(総務省発表)といわれていますが、船舶で沖に出ていた場合や、出航地から離れた島にいる場合は、もちろんその何倍もの時間を要することでしょう。
そのため大ケガをした場合は、救急隊員が到着するまでの「応急処置」が非常に重要になってきます。
少し大げさな表現にはなりますが、海上での負傷時は戦地とほぼ同じ対応が必要です。
米軍が作成した戦傷救護ガイドラインには「傷病者本人もしくは直近の人が限られた資材で応急処置のみを行う」というものがあり、海上でも同様のことがいえるからです。
知識が無ければ難しいこともありますが、命を繋ぎ止めるためにも必要なこと。
そこで今回は、応急処置の最優先事項となる「止血」にフォーカスしてご紹介しましょう。
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船舶と人との衝突やスクリューなどによる負傷、シャークアタックによる四肢の損傷・離断など、あらゆる状況で大量出血は起こりえます。
そして全身の血液量(体重の約7%~8%)の約3分の1が失われると生命の危険に陥るといわれていますから、早急に出血を食い止めることが生死をわけるのは想像に難くないでしょう。
では、いかにして止血するか。
誰でもすぐに実行できるのは、傷口にタオルやガーゼなどを当てて強く圧迫する「直接圧迫止血法」ですね。
ほとんどの出血はこれで対応できるはずです。
感染防止のため、ビニール袋などを手に巻いて血液に直接触れないように注意しましょう。
四肢の離断などで直接圧迫止血が不可能なほどの大量出血の場合、私たちK38 JAPANでは「ターニケット」というベルト状の止血帯を使用します。
出血箇所の5~8センチほど心臓側をこれでしっかり締めつけてから、医療機関へ搬送します。
一度締めたら搬送が完了するまで緩めることはありません。
ターニケットの使用は難しくなく、これをひとつ持っていれば思わぬ大量出血にも対応できます(実際に使用する場合はしっかり教育を受けてからにしましょう)。
タオルやスカーフなども止血帯として使用可能です。
海上のようなただちに医療機関に行けない場所では、何より止血が最優先されます。
もちろん事故に遭わないことが一番ですが、限られた資機材でもいざというときに対応できるよう、心構えをしておくことも重要です。