photo/Jin Omura
親子2人3脚で世界へ
日本で水上バイクを操船できるのは、特殊小型船舶免許が取得できる16歳になってから(15歳9か月から受験可能)。
一方、海外では免許制度が無い国が多く、幼少期から水上バイクに乗れるため、レースにもジュニアを対象としたクラスがあります。
小学生ぐらいの子どもたちが大人と同じようにブイを回っているわけですから、海外では有望な若手ライダーが数多く輩出されるのも納得。
日本との環境の差は歴然といえますが、そんな障壁をものともせず、若干13歳の日本の若武者がアメリカのレースに挑戦。
彼の名は佐藤進之助。SuperJetとともに世界で戦う少年です――
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進之助くんが水上バイクレースへの挑戦を決意したその背景には、自身も国内外のレースで活躍し、現在は大阪府摂津市の水上バイクショップ『FORCE』を切り盛りする父・保宏さんの存在が大きかったことは間違いありません。
保宏さん全面バックアップによる親子2人3脚での海外挑戦となりますが、ふたりが最初の舞台に選んだのは2023年5月にカリフォルニア州ハンティントンビーチで開催された『BEST OF THE WEST 2023』。
アメリカの西側を舞台に開催されるシリーズ戦で、進之助くんがエントリーする大会はアメリカ国内で唯一のサーフレースです。
初レースの進之助くんにとってはタフな環境。さらに前々日に予定していたサーフコンディションでの練習が大荒れで中止となり、ほぼぶっつけ本番でレース当日を迎えることに。
エントリーしたのは『Junior Ski 13-15 Lites』で、13歳から15歳を対象とした立ち乗り(1人乗り)のクラスです。
出場者のほとんどがヤマハSuperJet(以下SJ)での参戦で、進之助くんも現地でレンタルしたSJで2日間、4ヒートのレースを戦います。もちろんこのクラスの日本人は彼ひとりです。
大会期間中は史上最悪といっても過言ではないほどの大波で、気温・水温ともに低く厳しいコンディション。
さらに10-12歳クラスは年相応のレベルでしたが、13-15歳クラスは一気にレベルが上がり、大人顔負けのレースに。
進之助くんにとっては初出場、悪環境、高レベルとハードルがどんどん増えていきましたが、大人でも怯むようなレースをケガなく無事に完走できたのは、「非常に良い経験となりました」と保宏さん。
1度レースを走ったあとは進之助くんと同年代の子が話しかけてくれるようになり、事前に用意していた手書きメッセージ付きのスナック菓子をきっかけに、友だちもたくさん作れたとか。
初めての参加で右も左もわからない状態でしたが、大きな収穫のある初レースとなったようです。
自身2戦目で世界最高峰の舞台へ
1戦目から5か月後の2023年10月、自身2戦目となる海外レースは、ジェットスポーツの聖地アリゾナ州レイクハバスで開催された『2023 IJSBA WORLD FINALS』。
各国から名だたる選手が参戦する世界的なレースで、ジュニアクラスにも多くのエントリーが集まります。
進之助くんも前回より成長した姿を見せたいところですが、まずは大会前に毎年開催されている『Junior Stars』というイベントに参加。
世界トップクラスのプロライダーがライディングを教えてくれるスクールで、レースコースをみっちり走り込んだりスタート練習もできたため、進之助くんにとって良い機会となったようです。
またライダー同士の交流を深めることも目的としており、翌日のパーティも含めてさらに多くの友だちができたとか。
世界中に友人ができるのも、海外レースに参戦する醍醐味ですね。
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そして迎えたレース当日。日本から送っていたマシンが間に合わないトラブルがあり、今回もレンタルSJでの参戦です。
エントリーしたのは前回同様『Junior Ski 13-15 Lites』ですが、今回は予選があります。
緊張からかスタートで出遅れてしまい、その後追い上げを見せたものの後半で落水。その際に膝を負傷してしまい、予選通過はならず敗者復活へ。
無事に1位通過で決勝へ進みましたが、ヒート1は10位で、ヒート2はマシントラブルでリタイア。
悔しい結果となりましたが、海外レース1年目で様々な経験を積み、「2023年で得たものをベースに、2024年はより攻めた年にします」と意気込みは十分。
海を渡って堂々の走りを見せた日本の若武者は、きっと来年以降、大きく羽ばたいてくれることでしょう。
4ストロークSJでの参戦も検討しているとのことで、進之助くんの今後の活躍から目が離せません。
ヤマハ発動機
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/
フォース
https://tw1.jp/