水上バイクとボートレースの「二刀流」レーサーが、レースのことやお金のこと、家族のことをホンネトーク!|小原聡将インタビュー

平均年収は1800万円!?
ボートレーサーのお金事情

HWSM 水上バイクとボートレースの二刀流レーサーとして活躍する小原選手ですが、二刀流といえばMLBの大谷翔平選手の年俸が大きな話題となりましたので、少しお金について聞かせてください。

まずは10月と12月の大会で、1万ドル(約140万円)と80万タイバーツ(約330万円)の賞金を獲得されました。水上バイクのレースとしては破格ですが、使い道は考えていますか?

小原 マシンでお世話になっているPro Watercraftだったり、チームのオーナーさんだったり、メカニックの藤江さんだったり、やっぱりみんなのおかげで取れた成績であり賞金なので、みんなが幸せになるような使い方ができればいいなと思っています。来シーズンのレースの活動資金やマシンの開発資金にもなりますし、水上バイクのレースのために使う予定です。

家族旅行ぐらいは行けたらいいですけどね(笑)。

HWSM 2022年に結婚されて、娘さんも産まれました。一家の大黒柱になって、心境の変化はありましたか?

小原 もちろん仕事を頑張る理由になります。ボートレースはどれだけ勝ってどれだけ賞金を稼げるかっていうのが収入源なので、レースを頑張ることが直接的に家族を養うことに繋がります。

家族全員が楽しく過ごせるように自分は頑張らないといけませんし、あとは一度骨折して手術するぐらいのケガをしたんですけど、その時はすごい心配を掛けましたし、レースを走れない期間は収入もありません。

そういうのを含めると、「ケガをしてはいけない」っていうのを強く意識するようになりました。勝つこと、結果を出すことはレースを走るうえでもちろん重要ですが、まずは安全にゴールする、五体満足でゴールするっていうのが一番大事だなと。子どもが生まれてからその思いはより強くなりました。

ケガをしない、ケガをさせないっていうのを、ボートレースでも水上バイクのレースでも以前より心がけるようになりましたね。

奥様の那実さんと愛娘の縁(ゆくり)ちゃんの存在が、水上バイクとボートの二刀流を両立する原動力になっているようです

HWSM 休んでいるあいだは無収入に?

小原 そうですね。あとはケガの他にレースのフライングや転覆にも気をつけています。転覆はもちろんケガに繋がる可能性がありますし、フライングは罰金があるのと、30日以上走れない罰則もあるので、ちゃんとスタートしてちゃんとゴールするのが本当に重要。

そういうプレッシャーのなかでレースをやっているので、メンタルはかなり鍛えられました。それが普段の生活や水上バイクのレースにも影響しているような気がしますね。

HWSM ちなみにボートレーサーの平均年収は1800万円ぐらいだと言われていますが、デビュー当時は「遠く及ばない」と言っていました。

小原 Uber Eatsでバイトしていたぐらいです(笑)。

HWSM 今はA2級に上がられて、平均年収にだいぶ近づいてきましたか?

小原 そうですね。ボートレーサーの平均年収は一部のトップレーサーがかなり引き上げているので、上から下はかなりの開きがありますけど(笑)。自分もやっと平均を超えるぐらいにはなりました。

そういった金銭的な余裕もそうですし、時間的な余裕もそうですし、あとは色々な心配事や不安が経験を重ねることで少なくなってきて、精神的な余裕も生まれてきました。それも水上バイクのレースに復帰できるようになった理由ですね。

HWSM ボートレースと水上バイクの二刀流で大変お忙しいと思いますが、自分の時間はありますか?

小原 意外とないですね。ボートレースは今A2級というカテゴリーにいるので、ありがたいことに斡旋(レースへの出場)も以前より増えました。だいたい月に3週間ぐらいレースが入ることも多いですし、レース以外の活動もあるので、あいだの休みは多くても1週間ぐらい。

そこで水上バイクの練習をしたりマシンのテストや整備をして、残りは家族の時間。暇でボーッとする余裕はほとんどないですけど、充実しています。

HWSM 家族で過ごす時間は確保できているんですね。

小原 まだ子どもが小さいですから、できるだけそばにいたいです。仕事に行っちゃうと1週間は家族と離ればなれになるので、時間があるときは公園で遊んだり、家族と過ごすようにしています。

水上バイクとボートレースの
二刀流で目指すはテッペン

HWSM 次にボートレーサーとしての2023年を振り返ってもらいたいのですが、2023年はボートレース江戸川のフレッシュルーキーに選出されました。この「フレッシュルーキー」とはどのようなものですか?

小原 全国に24場あるボートレース場がそれぞれ2名ずつ、登録されて5年以内の若手選手を選抜して強化・育成する制度です。そのレース場での実績や他のレースでの実績も含めて選ばれるんですけど、自分の場合はボートレース江戸川が好きというのもありましたし、そこである程度の実績を残して実力を認めてもらえたので選んでもらえたのかなと思います。

HWSM 2023年はボートレース江戸川をはじめ多くのレースに出場されましたが、グレードレースにも初出場されましたね。

小原 群馬から大阪までにある12か所の支部を「東地区」として、そのなかの勝率上位者が出場できるG3のイースタンヤングに出ることができました。

HWSM 5月にはボートレース江戸川で初優勝が目前でした。

小原 予選をトップ通過できて、準優勝戦も1号艇から逃げられたのであとは優勝戦で1号艇から逃げるだけ、という優勝の王道ルートだったんですけど……。

HWSM これは優勝するだろうと思って見ていました。

小原 ですよね。1周1マークを曲がったところまでは優勝を確信していたんですけど、本当に詰めが甘かったというか、最後の最後で江戸川の洗礼を浴びたというか……。転覆してしまい、目の前にあった優勝を掴むことができませんでした。いつも通り、いつも通りとは思っていたんですけど、力が入っていたのか。今思いだしても悔しいですね。

2023年はA2級に昇格し、着実にステップアップ。2024年は初優勝に期待しましょう

HWSM 「江戸川の洗礼」とはどのようなものですか?

小原 ボートレース江戸川は川をそのまま利用した全国で唯一のレース場なので、波乱も多いんですよね。他とは走り方もボートのセットアップも違うので、独特なレース場なんです。

HWSM そこで何度か優勝戦を経験されていますが、やはり波は得意ですか?

小原 自分は水上バイクのレースですごい波のなかを走っている経験がありますから、やっぱり波が出る江戸川のようなレース場は得意なのかもしれませんね。

HWSM グレードレースも走り、優勝戦も何度か経験され、A2級にも昇格されました。着実にステップアップしていますが、ボートレーサーとしての成長を実感する部分はありますか?

小原 レースに対する考え方や、自分の得意とする走り方、その走りをするためのセットアップなどが少しずつわかってきたので、それが結果に繋がっていると思います。

あとは単純にA2級になると斡旋が増えるので、走るレースも増えます。ボートレースは経験値がもっとも重要だと思っているので、たくさんレースを走って経験を積めるのは大きいですね。

HWSM 最後に2024年の目標を教えてください。まずは水上バイクのレースですが、先ほど「明確な目標ができた」と言っていましたね。

小原 ワールドカップのタイトルを取りに行く、というのが最大の目標です。2023年はやっと世界一が取れるかも、というある程度の自信を持って臨んだ結果が2位だったので。

悔しい思いをしましたけど、自分が今どれだけ足りていないかっていうのもわかったので、マシンのトップスピードもあと3~ 4キロはアップさせなきゃいけないし、その上で自分の体力も向上させなきゃいけない。これまでのトレーニングでは足りていなかったとわかったので、この1年でマシンと自分自身を準備して、来年こそは世界チャンピオンを取りたいですね。

HWSM ボートレースでの目標はいかがでしょう。

小原 2023年にA2級に昇格できて、降格することなく2期目を迎えられたんですけど、やるからにはもうひとつ上のA1級を目指します。ボートレースではA1が最上位で、A1になれば「記念」と呼ばれるG1のレースだったり、その上のSGというレースも走れます。A2で満足せずに、2024年はA1を目指したいですね。

HWSM これからも「二刀流」を続けていきますか?

小原 よほど続けられない事情がないかぎりは、両立していきたいですね。

本当はボートレーサーになったら、それ1本でやっていくつもりだったんです。でもボートレーサーになってから最初に走った宮古島での水上バイクの耐久レースで、「水上バイク って楽しいな」「コンペティションって楽しいな」っていうのを改めて実感しました。

そこでやっぱり「やめられないなあ」って思ったんです(笑)。

ボートレースが仕事なら水上バイクは趣味って扱いになると思うんですけど、自分のなかで水上バイクはもはや人生の一部なんです。

ボートで結果を残したい気持ちはもちろんありますけど、それを続けていくためのモチベーションが水上バイクなので、どちらのレースも楽しみながら続けていけたらいいですね。


取材協力
ジェットフィールド湘南
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