【インタビュー】下半身麻痺のハンデを乗り越え世界の舞台で活躍するアメリカ人レーサー|アンソニー・ラデティック

Sea-Dooの写真でも
お馴染みのあの人

おそらく多くのひとが目にしているこの写真のライダーこそ、何を隠そうアンソニーです

オフショアレースや耐久レースを中心に世界中で活躍するアンソニー・ラデティック。Sea-Doo のアンバサダーでもあるため、写真や動画でその顔に見覚えがあるひとも多いでしょう。

レースでも数多くのタイトルを獲得する実力派ライダーですが、実は水上バイクのレースを始める前にバイク事故で下半身麻痺のハンデを背負い、現在も車椅子での生活を送っています。

事故当時は精神的なダメージも計り知れず、数年の鬱状態にも陥ったそうですが、そんな状態の彼がなぜ、水上バイクのレースをスタートしたのか。ハンデに打ち勝ったその裏には、妻からの提案と献身的なサポートがあったそうです。


Anthony Radetic
アンソニー・ラデティック

米国フロリダ州フォートローダーデール出身。46歳。バイク事故で下半身麻痺のハンデを負いながら水上バイクのレースに出場する鉄人で、『2023 Mark Hahn Memorial 300』や『WGP#1 OFFSHORE WORLD CHAMPIONSHIP 2023』などの世界的なオフショア耐久レースでチャンピオンに輝く。ニックネームはRad Man(ラッドマン)。写真右は愛娘のアナ・ラデティック。


 

事故で失った冒険心を
取り戻すための挑戦

――はじめて水上バイクに乗ったのはいつごろですか?

2006 年です。2004 年のバイク事故で下半身が麻痺して、精神的にもまいっていたのですが、冒険心を取り戻すための「挑戦」として妻が水上バイクに乗ることを提案してくれました。

そのときの体験がとても印象的で、圧倒的なスピード感と水との一体感、そして自由を感じられる体験はこれまでに味わったことのないものでした。「もう一度挑戦しよう」という情熱を取り戻せたのも、このときでした。

――水上バイクに乗ることへの不安はありませんでしたか?

もちろん不安や恐怖はありましたが、それを乗り越えることこそが「挑戦」でした。妻の献身的なサポートもあり、自分の限界に挑む手段として水上バイクに乗ろうと決めたのです。

その後、さらなるアドレナリンを求めていた私を見て、妻がレースに出ることも勧めてくれました。

アンソニーが競技人生をスタートする大きなきっかけとなったのが、2013年の『NEVER QUITCHALLENGE(ネバー・クイット・チャレンジ)』。フロリダ州キーウェストからニューヨークまでの2560kmを水上バイクで走破するこのイベントは、単なる冒険的な催しではなく、負傷した退役軍人に自信を取り戻してもらうための取り組みでもありました。アンソニーもこの途方もないチャレンジを成し遂げ、翌年から水上バイクのレースに参戦しています(写真手前がアンソニー)。

――はじめてのレースはいつでしたか?

2014 年に耐久レースに出場したのですが、目の覚めるような思いでした。本気で挑むなら相応のトレーニングと準備が必要だと感じ、その経験がさらに上のレベルを目指すモチベーションになったのは間違いありません。

――水上バイクのレースはどこに魅力を感じますか?

ライダーとマシンがダイレクトに繋がっている感覚を味わえることですね。人馬一体となってマシンを操る集中力と水上を駆け巡るスピード感、そして予測できない展開が連続するスリリングな体験は、私にとってまさに生きがいです。

――水上バイクのレースでケガによる身体的な制限を感じることはありますか?

もちろん制限はありますが、そのハンデを乗り越えるために自分なりに工夫しています。マシンのカスタマイズやトレーニングで自分の強みを最大限に活かして、弱点を補っています。

――マシンには特別なカスタマイズをしていますか?

はい。私のRXP-X 325 にはJETTRIM の特別なカスタムシートを装備しています。あとはRiva Racing によるパフォーマンスチューンが施されていて、レース中の操作性と快適性を両立しています。

――2023年からSea-Dooのアンバサダーでもありますが、RXP-Xのすぐれている点を3つ教えてください

すぐれたハンドリング、力強い加速性能、アグレッシブな走りにマッチしたデザイン。この3つがRXP-X の最大の魅力です。

――なぜRXT-XではなくRXP-Xを選ぶのでしょうか?

RXP-X の俊敏性とハンドル操作がダイレクトに反映される反応性が私のレーススタイルにマッチしています。高速域でも安定しつつ、細かい動きにも対応できるのが決め手です。

――競技カテゴリは耐久レースがメインですか?

そうですね。耐久レースは肉体と精神両方の持久力が求められ、戦略と粘り強さが試されるので私のメンタリティと非常に合っています。

――もっとも印象に残っているレースは?

タイのプーケットで開催された世界大会での優勝は、自分の成長と努力の証として印象深い大会になりました。

――今シーズンの目標は?

自分の限界にはこれからも挑み続けたいと思っています。あとは競技そのものの成長に貢献することや、新しいライダーの育成にも尽力したいです。そしてSea-Doo のアンバサダーとして、ハイパフォーマンスマシンの開発にも貢献したいですね。

――レース以外でも家族や友人と水上バイクに乗ることはありますか?

もちろん。家族と一緒に水辺を探索したり、一緒に水上バイクに乗ってその時間を共有することがとても気に入っています。

――お気に入りのスポットは?

アラバマ州にあるユーファウラ湖が一番のお気に入りです。自然に囲まれた美しい景色が広がる場所で、そこを楽しんだあとに家族と食事をする時間が最高のひとときです。

――今後水上バイクで行ってみたい場所や挑戦してみたいことはありますか?

アラスカには一度行ってみたいですね。雄大な自然と広大な水路を水上バイクで探索するのは、素晴らしい冒険になるはずです。

――水上バイクの魅力は?

スピード、機動性、自然との一体感が絶妙に融合した、唯一無二の乗り物です。スリルを求めるひとにも、癒やしを求めるひとにも、かならず最高の相棒になってくれます。

――今回はレース出場のために来日されましたが、日本に来たのは何度目ですか?

これまでに何度も日本を訪れていますし、そのたびに文化やおもてなしの素晴らしさを深く感じています。

――日本の印象は?

伝統と革新が融合した素晴らしい国です。人々はとても温かく、景観も本当に美しい。いつもまた来たいと思わせてくれます。

――観光には行きましたか?

はい。大阪城を訪れたり、東京でも少しだけ観光しました。歴史ある場所と現代的な都市が同居しているのが魅力的ですね。

――また日本でレースが開催されたら参加したいですか?

もちろんです。次回はリベンジの気持ちも込めて、必ず戻ってきたいと思っています。日本のファンやレース関係者のサポートは本当に素晴らしく、また参加できるのが今から楽しみです。

Anthony Radetic Facebookより


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