ヤマハ ウェーブランナーの発売40周年を記念して、日本限定で発売されたFX JAPAN LIMITED。
日本だけの特別モデルが生み出された経緯や、そこに込められたこだわりと思いを開発メンバーの井上かおりさんに語ってもらいました。
井上かおり
ヤマハ発動機WV開発部 WV機能開発G
FX JAPAN LIMITEDの開発メンバー。2019年からマリン部門でCMFG(Color-Material-Finish-Graphic)を軸とした先行デザイン開発に携わる。直近ではセルロースナノファイバーを採用した1.9L HOエンジンのエンジンカバーのデザイン選定から設計、モデリング、生産展開までを担当。
日本限定モデルを発売した理由
――普段はどのような業務に従事されていますか?
WV開発部WV機能開発グループに所属していて、先行アイテムやトレンドの調査、分析、評価をおこなっています。
――海外モデルとは別に日本限定の40周年記念モデルをリリースすることは、開発当初から決まっていましたか?
2023年ごろから構想があり、そのころから決まっていました。日本ならではの特性やニーズに応えたいという思いがあったのと、一般的なライン生産では難しいデザインや素材、仕上げを日本ならではの精密なものづくり環境で実現したかったのが日本限定モデルを展開した理由のひとつです。
――これまでにも日本限定モデルが発売されたことは?
2003年にMJ-SJ 700のタイガースバージョンを発売しています。それと2006年にMJ-SuperJet RIUS RACING Limited Editionを日本限定で販売しています。
――ランナバウトの日本限定モデルは今回が初ということですね。ベースにFX Limited SVHOを選んだ理由は?
ウェーブランナーの頂点にふさわしい、最高のプラットフォームで記念モデルを作りたかったのが理由のひとつです。40周年という節目に作る特別なモデルへのこだわりを実現するためには、造形や素材、レイアウトの余白があり、表現の幅が広いFXがもっとも適していました。
所有欲をくすぐる特別感のあるデザイン
――40周年記念モデルを開発するうえで意識したことは?
40周年という特別な節目だからこそ、ウェーブランナーが歩んできた40年の歴史を細部のデザインに宿らせ、見た目や質感を通じて他のモデルとは違う「記念モデルらしさ」を感じていただけるようにしました。機能面ではすでに高い完成度を誇っているため、今回は“所有する喜び”や“特別感”などの情緒的価値を重視しています。
――「RED DNA」というデザインコンセプトについて詳しく教えてください。
ひと言で言えば「40年かけて熟成したブランドの軌跡」です。初代モデルのMJ-500Tから受け継がれる“赤”のアイデンティティを現代的に進化させ、40年の歴史とブランド精神を象徴的に表現したデザインに落とし込みました。
――その結果、オリジナルのワインレッドカラー「煌めく深紅」が生まれたのですね。
MJ-500Tを象徴するカラーであった赤をそのまま使うのではなく、「40年の歴史で熟成したような深い赤」へと深化させることで過去への敬意とブランドの成熟を表現しています。このモデル専用に開発された世界にひとつしかないヤマハオリジナルの塗料を使用していて、ネーミングは日本らしい情緒性のあるものを採用しました。熟成した深みのある赤(紅)と、「光の当たり方で表情が変わる艶=煌めき」という意味が込められています。
40年の歴史を体現するモデル
――開発するうえでもっとも苦労した部分を教えてください。
塗装色(ワインレッド)の色味を、異なるメーカーの異なる素材で合わせることがもっとも苦労しました。何度も試作と調整を重ねて、理想的な統一感に仕上げました。あとはボルト類に施したゴールドの特殊加工が、見た目の美しさと耐久性のバランスを取るのに時間が掛かりました。高級感のある仕上がりを保ちつつ、長時間の使用にも耐えうる品質を確保するために、細部まで丁寧に検証を重ねています。
――カラーリングの他にも初代モデルからの継承を意識した部分はありますか?
当時のストロボ/ブロックパターンやシートに施した赤のステッチでしょうか。ブロックパターンのデカールは透明なベース素材を採用しているため、貼りつけ面との境目が目立ちにくくなっています。
――このモデルで個人的にもっとも気に入っているのは?
色々な部分に思い入れがありますが、ボーディングステップに刻まれた「1986-2026」のデザインはお気に入りです。
――ユーザーには特にどの部分を見てほしいですか?
特定のどこか、というわけではなく、日本のものづくりの緻密さと、ウェーブランナーが歩んできた40年のストーリーを感じてもらえたらうれしいですね。水上での爽快感はもちろんですが、ガレージに置いたときの誇らしさや、眺めるだけでも心が高鳴るような存在感を持たせられたと思います。
