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異次元の旋回性能を、すべてのひとに
RXP-Xの類い希なる旋回性能を、2013年のワールドチャンピオンであるジャレッド・ムーアはかつて「熱したナイフでバターを切るようなフィーリング」と評していた。
これは切れ味鋭い旋回性能を表現する言い回しだったが、2021年にフルモデルチェンジしたBRP Sea-Doo RXP-X 300 RSには、この表現がより一層しっくりくる。
想像してみてほしい。熱したナイフでバターを切ったその手には、ほとんど抵抗を感じないはずだ。年端もいかない子どもであっても、容易に事を終えるだろう。
そう、新型RXP-Xは「誰が乗ってもトップクラスの旋回性能を発揮できる」ほどのコーナリング性能を実現している。インプレッションライダーを務めてくれたトップライダーの生駒 淳もそう語っており、次のように続ける。
「重心が旧モデルより前に移動したことで、新型RXP-Xはノーズが常に水面を食っているような状態で走っているんです。
“いつでも曲がってやる”という臨戦態勢ともいえる状態なので、スロットルを戻して、ノーズを食わせてみたいなアクションがなくても、ハンドルを切れば勝手に曲がってくれます。
RXP-Xの旋回性能を誰でも簡単に発揮できるようになったんですから、すごいことですよね。誰がブイを回っても、速くキレイに曲がれると思います」。
また重心が前方に移動したことで、波を越える際にも「上じゃなくて前に飛んでくれるから、ロスが少ないし乗りやすい」という。
ノーズが上下に跳ねにくくなっていることもあり、直進時の安定性にもひと役買っているなど、わずか50mmの重心移動が多くのメリットを生み出している。
ちなみに新型RXP-Xの国内導入モデルは、オーディオが標準装備となっている。RXPにオーディオという組み合わせを見て、生駒は「少しでも前を重くするためのオーディオ」だと思ったそうだ。
新開発「T3-Rハル」がもたらしたもの
新型RXP-Xには、新開発のT3-Rハルが採用されている。基本的な形状は従来のT3ハルを踏襲しているが、「純粋によく曲がるようになっているので、ハル性能も良くなっているんだと思います」と生駒はいう。
そしてもっとも大きな特徴が、シャークギル(サメのエラ)と呼ばれる凹凸形状が新たに追加されたことだろう。
走行時にハルと水面のあいだに発生する空気を整流することで、高速旋回時の安定性と操作性を高めるといわれており、生駒もその安定性には舌を巻く。
「旋回中にフラフラすることもないですし、曲がり方はすごく安定しています。水面へ張り付いているような感じで、自分たちのレースボートみたいな、曲がるために作ったような乗り味ですね」。
約30kgの軽量化による恩恵
T3-Rハルの採用と重心位置の移動により、コーナリング性能は飛躍的に向上。なおかつ多くのひとがそのポテンシャルを引き出せるようになったわけだが、もうひとつ忘れてはならないのが約30kgの軽量化だ。
「ノーズが常に水面を捉えているから旋回の初動が驚くほど速いんですけど、それは軽量化の影響も大いにあると思います。
自分が曲がろうと思ってハンドルを切ったか切らないかぐらいで、船はもう曲がりはじめてますからね。
旋回後の立ち上がりも速いですし、とにかく動きが軽くて俊敏で、スポーツカーに乗っているみたいな感覚です。
というか、軽くて動きが良くてノーズが食うって、さっきも言いましたけど自分たちがレースボートで目指すようなことなんですよ。それを純正でやってるんだから、ビックリですよ」。
エルゴロックRがライダーをサポート
ライダーの想像よりもさらにワンテンポ速い旋回の初動と、旧モデルを上回るコーナリングスピードを誰でも発揮できるようになったわけだが、その分ライダーへの負荷も増している。
それに対応するべくエルゴロックシステムが刷新され、特にアジャスタブル・リアサドルを採用したエルゴロックシートは、まるでレースボートのような装いに。
ライダーをがっちりホールドするフィット感の高い仕あがりとなっており、グリップ力の高い座面や包み込むようなニーポケットが、異次元の旋回をサポート。
クッション性も良くなっており、「乗った瞬間にわかるはずです」と生駒も太鼓判を押す。
コーナリングマシンとしての、理想的な進化
「おそらくレース未経験のひとでも、すごい曲がる!! って感じられると思います。すごくイージーで、船が勝手に曲がってくれるような感覚だから、ブイ回りをするひとにとって最高の相棒になるでしょうね。
これからブイ回りをしてみたいというひとにも、うってつけだと思います。最初から2~3年練習したぐらいのコーナリングが、新型RXP-Xならできますからね(笑)。
コーナリングスピードはかなりのものだから、練習して体が付いていけるようになれば、みるみるうちに上達するはずです」。
近年のSea-Dooは釣り、ウェイク、ツーリングと、その目的に沿った装備や機能を与えて各モデルのキャラクターを明確にしている。
その流れから鑑みれば、RXP-Xはもちろんブイ周り担当。レースボートと同様のベクトルで開発され、より速く、より正確に、より安定した旋回を実現した。
コーナリングマシンとして理想的な進化を遂げたといえるだろう。
レースボートと同等レベルの性能と負荷
走行性能が申し分ないことはもはや疑いの余地も無いが、生駒も言っているように「体が付いていけるようになれば」というのもひとつのポイント。
「誰が乗ってもある程度は同じように速く曲がれるから、1周勝負ならそこまで大きな差は付かないと思います。
でも、10周勝負だったら大差が付く。
それは体力の差で、やっぱりコーナリングスピードが上がってますから、ライダーへの旋回Gも相当なものなんですよ。
シートとかで耐えやすくはなっていますけど、負担はゼロにならないですから。
自分たちのレースボートと同じぐらいの感覚で曲がっていくので、そのつもりで最初は様子を見ながら乗った方がいいですね。それぐらい高性能なマシンということです」。
ツーリングだと、実際どうなの?
ブイ周り担当、と言い切っておいてなんだが、あえてツーリングではどうなのか、生駒に質問をぶつけてみた。
「長時間乗ったり、実際にツーリングしたわけでもないですけど、中速域でもノーズが跳ねづらいから乗りやすいとは思いますよ。
高速域も安定しているから不安がないですし、波を飛んでも上じゃなくて前に進んでくれますから、そういう部分はツーリングでもメリットになるでしょう。
ただ、あのコーナリング性能はツーリングでは出番がなさそうですけど(笑)」。
オーディオやLinQアタッチメントといった「イマドキの装備」もしっかり抑えていることから、「普段はレースに出たりブイ回りがメインだけど、友だちに誘われたらツーリングもいけるよ、みたいなことですかね。タンデムシートもあるし」という感じだろう。