マリンスポーツ専門誌の編集長など、マリンスポーツ&レジャーの現場で活動するマリンジャーナリストと、マリンに関心を持つジャーナリズム関係者・有志の集りである、マリンジャーナリスト会議(MJC)。
MJCでは、2020年に国内で報道された主なマリン関連ニュースをリスト化し、会員による投票を実施。その結果をもとに、さらに審議をおこない、2020年のマリン10大ニュースが決定した。
MJCが選ぶ、2020年マリン10大ニュース
【1位】
「ジャパンインターナショナルボートショー2020」開催中止
3月5日から8日、パシフィコ横浜で開催予定だった「ジャパンインターナショナルボートショー2020」の開催中止が発表された。一般社団法人日本マリン事業協会は、新型コロナウィルスの感染が拡大する中で、来場者および出展関係者の健康や安全面を第一に考え、3月5日から4日間、パシフィコ横浜および横浜ベイサイドマリーナで開催を予定していた「ジャパンインターナショナルボートショー2020」の中止を決定した。
ジャパンインターナショナルボートショー2020
【2位】
2023年の自律航行実現を目指す「X40 Concept」を発表
ロボットクリエーターの高橋智隆氏らが参画するスタートアップ企業Marine Xは、異なる業界から新たなテクノロジーを取り入れ、応用することで、水上モビリティの体験を「より安全に、快適に、楽しく」することを目指している。そんな同社では、独自開発の安全航行アシストシステム「ポラリス」を搭載したAIクルーザー「X40 Concept」を発表した。X40は、高橋氏がこれまで手掛けたロボットを彷彿させる曲線を多用したスタイルが印象的な、船外機2基掛け艇。一方、搭載されるポラリスは、画像認識AIを活用することで水上の航行可能エリアと障害物を検知し、その方角とおおよその距離を操船者に知らせるシステムで、将来的には自律航行システムへのアップグレードを目指している。
Marine X
【3位】
2019-2020 日本-パラオ親善ヨットレース、参加全艇が完走
パラオ共和国の独立25周年を記念して開催された「日本-パラオ親善ヨットレース」は、参加7艇のヨットと、伴走艇となった練習帆船〈みらいへ〉が、2019年12月29日に神奈川県の横浜港からスタート。途中、低気圧の接近などもあったが、全艇が1,726マイルを走破。優勝は神奈川県からエントリーした〈テティス4〉(ベネトウ・ファースト40.7)で、所要時間は10日と16時間強となった。なお、このレースでは、両国の子どもたちがセーリングを通した交流を行ったほか、海洋マイクロプラスチックの調査も行われるなど、ヨットレースに付随するさまざまな取り組みが実施された。
日本-パラオ親善ヨットレース
【4位】
スズキ、船外機で海洋プラ回収 世界初、将来的には標準装備化も
スズキは1日、海洋汚染の原因となる微細なマイクロプラスチックについて、ボートの船外機に取り付け可能な回収装置を世界で初めて開発したと発表した。来年にも船外機のオプション用品として発売し、将来的には標準装備にすることも計画している。船外機は、エンジンを冷却するため水面付近から大量の水をくみ上げる。この水を戻す際に、回収装置のフィルターでマイクロプラスチックなどの細かいごみを回収する仕組み。装置を取り付けてもボートの走行性能には影響しないという。既に国内外の海や湖で実証実験を進めており、製品化に向けて改良を重ねる。
スズキ、世界初の船外機用マイクロプラスチック回収装置を開発(ニュースリリース)
【5位】
ヤンマーがトヨタ自動車と共同で舶用燃料電池システムの開発へ
ヤンマーホールディングス株式会社及び同グループのヤンマーパワーテクノロジー株式会社は、トヨタ自動車株式会社と覚書を締結し、トヨタ自動車製MIRAI用燃料電池ユニットと高圧水素タンクを使用した船舶用燃料電池システムの開発を開始した。国際海事機関において今世紀中の温室効果ガス(GHG)排出ゼロを目指す「GHG削減戦略」が採択されるなど、船舶業界では、世界的な環境規制強化が進んでいる中、化石燃料に捉われないパワートレインの開発を目指す。2020年度内を目標に、MIRAI用燃料電池ユニット等のマリナイズによる搭載性の向上及びより長い航続時間の実現を目的として自社製ボートによる実証試験を開始し、実用化と将来の多用な用途への適用に向けて開発を進めていく。
舶用燃料電池システムの開発を開始(ニュースリリース)
【6位】
ボート免許の取得者が増加中/4~9月で前年比113%
小型船舶操縦士免許の新規取得者が増えている。日本海洋レジャー安全・振興協会の集計によると、2020年4~9月の新規取得者数の累計が、昨年同時期の37,018人から41,803人と約113%にアップしている(1級、2級、湖川、特殊の合計/9月の数字は速報値)。現場の話でも、小社のスタッフが取材で訪れた免許教室を開講している某マリーナでは、年内はすべての講習が予約で埋まっているとのこと。学科講習をオンラインで受講できるヤマハボート免許教室の「スマ免」への申し込みも好調と聞く。取得者の数が増えている理由は、コロナ禍の影響で、密になりにくい海でボート&ヨット遊びがしたいという人が増えた? 特別定額給付金のおかげ? ……真相は今後の分析を待たなければならないが、何はともあれ、プレジャーボーティングに興味をもってくれる人が増えているのは朗報である。
(一財)日本海洋レジャー安全・振興協会
【7位】
単独世界一周ヨットレースへ。白石さん、53歳の再挑戦
世界一周が終わるまでは誰の手も借りず、途中で港に寄ることも、燃料や食料を補給することもできない。ルールを破れば即失格。そんな4年に1度のヨットレース「バンデ・グローブ」が、11月8日にフランス西部で始まる。欧州で抜群の人気を誇り、最も過酷とも言われるレースにアジアからただ一人出場するのが、海洋冒険家の白石康次郎さん(53)。「とにかく精いっぱい走って、完走したい」と明確な目標を掲げて臨む。出場は2度目。2016年の前回は、中盤の南アフリカ・ケープタウン沖でマストが折れ、無念のリタイア。「涙も枯れ果てた」と打ちひしがれた。だが、心までは折れなかった。工作機械大手のDMG森精機(名古屋市)が18年に立ち上げたチームに参加し、再挑戦への準備を進めてきた。
白石康次郎 公式ホームページ
【8位】
クルーズ船3,500人を新型肺炎で検疫 横浜、乗客が感染
厚生労働省は3日、横浜・大黒ふ頭沖に同日夜に停泊したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の船内で、乗客乗員約3,500人を対象とした大規模な検疫を実施した。香港の男性(80)が下船後の香港で新型コロナウイルスに感染したと確認されたことを踏まえた措置。船は横浜港に着岸せず、医師や看護師を含む検疫官が数十人態勢で乗船し、健康状態の確認を進めている。 厚労省によると、クルーズ船は1日に寄港した那覇でいったん検疫を終えた。その後に感染が確認されたため、那覇での検疫を取り消し、改めて横浜で実施する異例の対応を取った。政府関係者によると船内では7人が体調不良を訴えている。 検疫では健康チェックをした上で、発熱などの症状があればウイルス検査を行う。検査結果が判明し、全員の検疫が終了するのは4日午後以降の見込みで、それまで全員が船内で待機する。陽性の場合は感染症指定医療機関に入院となる。
【9位】
東京五輪延期でセーリングの吉田、吉岡組「全力で準備」
セーリングの女子470級で東京五輪代表に決まっている吉田愛、吉岡美帆組(ベネッセ)が五輪の延期を受け、所属先を通じて連名でコメントを発表した。「私たちの目指すところは変わらない。さらに練習に励む期間とポジティブに捉え、引き続き全力で準備を続けていく」と意気込みを示した。2018年世界選手権を制し、2019年は2位。金メダル候補として迎える1年後の大舞台について「世界がこの危機を乗り越え、東京五輪に世界中のアスリートがベストな状態で臨めることを心から願っている」と語った。
Benesse Sailing Team
【10位】
トヨタマリンが自動着桟システム「トヨタ・ドッキング・アシスト」を発表
トヨタマリンでは、同ブランド艇にオプション機構として搭載してきたTVAS(トヨタ・バーチャル・アンカー・システム)を発展させ、自動着桟を可能としたシステム、TDS(トヨタ・ドッキング・サポート)を発表した。TVASは主機とバウスラスターの推力を制御することにより、定点保持や横移動を実現するシステム。TDSは、TVASのシステムとGNSS(全球測位衛星システム)による位置情報を組み合わせることで、事前に登録した係留場所への自動着桟ができるほか、ジョイスティックよりも安定したタッチスクリーンによるサイドスラスト(横移動)モードの利用が可能となっている。
トヨタマリン