生駒 淳の海外レース参戦記#14|2021 IJSBA WORLD FINALS(ワールドファイナル)

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生駒 淳 Jun Ikoma
国内だけにとどまらず、世界中のレースに積極的に参戦する日本有数のトップライダー。2011年よりJJSFに参戦し、国内では2015年と2017年にはPRO RUNABOUTでシリーズチャンピオンに。海外では2012年にKINGS CUPで2クラス制覇、2018年にタイのJET SKI PRO TOURでシリーズチャンピオン、2019年にフィリピンのNATIONAL JET SKI RACEでシリーズチャンピオン、2019年のIJSBA WORLD FINALSで世界2位と、輝かしい成績を残す。


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ジェットスポーツの祭典「2021 IJSBA WORLD FINALS(ワールドファイナル)」に参戦するため、4月のジェットスキーワールドカップ以来およそ半年ぶりに海外へ飛び立った生駒 淳。

直前の国内レースでメインとスペアのエンジンにトラブルが発生し、急遽手に入れたニューエンジンを大急ぎでコンテナに詰め込んで送り出したため、予定よりも早めにアメリカ入りしたようです。

コロナ禍での海外渡航やリアルなアメリカ生活も含め、波瀾万丈の約2週間を振り返っていきます。

2021年9月30日(木)|マシンが間に合うかドキドキしながら米国へ

14時に成田空港に到着。今回のメンバーは自分と愛妻アケ、メカニックの殿井さん、チームマネージャの秋本さんの4人です。

コンテナに間に合わなかったパーツを手荷物で持って行くのですが、アレコレ詰め込んだら32Kgのスーツケースが4つに。総重量128Kg分のエンジンパーツを持って行きます。さすがに重すぎてチェクインカウンターで大変でした(笑)。

多過ぎですね。

その後スポンサーのGlobal WiFiさまからWiFi端末を無料でレンタルしていただき、16時30分に飛行機に乗りました。今回もANAのビジネスだったのですが、はじめて「THE Room」という完全個室タイプのシートだったのでワクワク。

いざ搭乗してみると、24インチのモニターに2人でも寝られそうな広いフラットベットなど、”世界最高レベルのくつろぎ空間”は伊達じゃありませんでした。

楽しい空の旅になりそう。

ここからロサンゼルス空港までおよそ10時間の空の旅ですが、現地に着いたら運転が待っているため機内で呑める時間は全体の3分の1程度でしょうか。

時間がもったいないとばかりに離陸直後から飲みまくり食べまくり、満足したところで就寝。ぐっすり眠って起きたところで美味しい朝食をいただき、大満足の機内となりました。

そして9月30日の14時に日本を出発しましたが、ロサンゼルスに到着したのは時差の関係で同じく9月30日の午前11時。とても得した気分です(笑)。

ロサンゼルス空港は日本のような厳戒態勢ではなく、コロナ関連の特別な検査や書類も必要ないのでいたって通常どおり(搭乗前に陰性証明書は必要ですが)。むしろ人が少ない分、いつもよりスムーズでラクちんでした。

空港にはロサンゼルス在住の辻本さんが迎えに来てくれて、そのままレンタカー屋にレッツゴー。

例年はサバーバンやキャデラックのような四駆のSUVを借りていたのですが、今年はピックアップトラックにしてみました。シボレー・シルバラードというクルマです。特に理由はありませんが、まあ何でも試してみるのは大切ですから。

今年の相棒です。

その後は「U-HAUL(Uホール)」というトラック専門のレンタカー屋へ。

ここはアメリカ国内に1万5000もの営業所を持っているそうで、なんと同社の営業所ならどこでも乗り捨てOKという画期的なシステムを採用。それだけの数があればだいたい目的地の近くにあるので、片道で用が済めばそのまま返せるからすごく便利。ぜひ日本でもやってほしいサービスです。

そんなわけでここでは15フィートのトラックを借りて、ロサンゼルスの倉庫に向かいました。

ここには日本から送ったみんなの荷物が届いているはずなのですが……。

ご存じの方も多いと思いますが、現在世界の物流は大混乱。この荷物が日本を出発したのは8月23日で、ロサンゼルス港の沖合に到着したのが9月9日。そのまま入港できればなんの問題もありませんが、そこから2週間待機してようやく船から荷物を降ろせる予定でした。

ちなみに送料も普段の5倍近い400万~500万円まで高騰していて、アメリカに荷物を送るには最悪の状況といえます。

そして不運は重なり、沖合での待機が2週間から3週間に変更。自分が飛行機に乗った時点でまだ港にコンテナが到着していない状況でした。これはレースに間に合わないのでは……。みんなの頭に最悪のケースがよぎりました。

しかし自分たちがアメリカに入国したまさにこの日、倉庫に荷物が到着。本当によかった! よく届いてくれたと神様に感謝しました。

無事に届いてくれてありがとう……!

倉庫には日本から送ったマイボートの「ガーコ」とは別に、アメリカのRIVAが製作した世界限定5台の新型RXP-X 300コンプリートマシンも届いていました。

これは自分がフィリピンのレースでメカニックなしでも戦えるように購入したマシンですが、コロナ禍でフィリピンに行ける目処も立たなかったのでずっとフロリダに置いてあったのを、今回のワールドファイナルで使おうとロサンゼルまで運んでもらっていました。

箱だしのまっさらな状態です。

この2艇をレンタルした2艇積みトレーラーに載せ、それ以外の荷物はU-HAULトラックに載せてそのままロサンゼルスのホテルに向かいます。今日のうちに会場のレイクハバスまで向かうこともできるのですが、ロサンゼルス周辺で買い物もしたいのでガーデナ地区にあるニューガーデナホテルに泊まることに。

このホテルはスタッフが日本人でお客さんもほとんどが日本人。朝食も和食が食べられますし、近くのお店も日本食が多いので非常に助かります。

今夜は近くの居酒屋に行って終了です。

↑ 出国からLAまでの動画です ↑

↑ 空港からホテルまでの動画です ↑

2021年10月1日(金)|寄り道しながらレイクハバスへ

今日は8時集合で、ホテル目の前のレストランでアメリカらしい高カロリーな朝食をいただきました。楽しみにしていたホテルの朝食は、コロナの影響で中止されていました(泣)。

ザ・アメリカ。

その後レイクハバスに向けて出発したのですが、まずはロサンゼルスから1時間ぐらいの場所にある「Chaparral Motorsports(チャパラル・モータースポーツ)」というバイクやATVの大型専門店に寄り道。日本の半額以下で買えるので、自分は毎年ここでネックガードや脊髄パット、ゴーグルを1年分買っています。

予定どおりお目当ての品はゲットできましたが、今年はコロナの影響かATVやバイクはほとんど置いてありませんでしたね。コンテナが来ないから工場は部品が作れないし、作ってもコンテナがないから運べないという、まさにコンテナ地獄。

他にも理由はあるのでしょうけど、1日も早くコロナが収束するのを願うばかりですね。

その後は「Desert Hills Premium Outlets(デザートヒルズ・プレミアムアウトレット」というパームスプリングス近くのアウトレットでお買い物。自分は何も買わなかったですが、みんなは滞在中の衣類などを買ったようです。

そしてこれにて寄り道は終了。ここからは一路レイクハバスを目指します。

途中、列車の火災でフリーウェイが通行止めだったりして6時間以上掛かりましたが、夜8時にはレイクハバスに到着。今回のレンタルハウスは3LDKでガレージ、プール、ジャグジー付きです。

ガレージも広々。

荷物を降ろしたら、すぐに自分は近くのスーパーマーケットで買い出し。食材や日用品をゲットして、今夜は自分がステーキを焼きました。アメリカのBBQグリルで焼くと、それだけで美味しくなるのはなぜでしょう。

↑ LAからレイクハバスまでの動画です ↑

2021年10月2日(土)|大親友との再会

今日は朝からみんなで買い出しです。ウォールマートやホームデポ、工具屋にスーパーマーケットと買い物三昧。工具屋ではチームクウェートのメンバーと遭遇して、世界チャンピオンのモハメド・バーバイエとも久しぶりに会いました。

そして午後からメカニックの殿井さんは、今回使うエンジンの制作に取り掛かりました。直前の国内戦でエンジンを2機潰してしまったので……。

自分たちはRIVA-RXPの慣らしをするために、(マシンテストでお馴染みの)ボディビーチに行きました。コイツを今から10時間も慣らし運転するのはなかなか大変ですが仕方ありません。ボディビーチではハンガリーのジョルジ・カーサもテストしていましたね。

相変わらずムキムキです。

夕方まで頑張って慣らしをしたあとは、今年もMaster Ski Stock(マスター・スキー・ストック)に出場するためのマシンを借りに友人宅へ。毎年何人かで共有するのですが、今年は自分しか使わないので持って行っていいよと言われていたので、2艇積みトレーラーで引き取りに行きました。

そしてこの日は、海外にいる友だちのなかでも間違いなく世界一の大親友であるフィリピンのBJと久しぶりに再会。英語ができない自分でも意思の疎通ができる、最高の友だちです。英語の会話をBJが英語で自分に通訳してくれたりとわけのわからない感じですが、とても助かってます(笑)。

ちなみにBJは自分に対して簡単な英語しか話さず、合間に「あー」とか「うー」とか詰まることがあるので、自分と同じく英語は得意じゃないと思っていました。同じレベルだから会話が成り立っているのかと。

しかし彼がアメリカ人と話しているのを聞いてビックリ。ものすごい流ちょうでネイティブな英語をしゃべっています。

BJが言葉に詰まっていたのは、英語ができないバカな日本人(自分です)にどれぐらい優しい単語を使ったら伝わるか考え、めちゃくちゃ優しい単語を選ぶのに悩んでいたのだとこのときわかりました。

だから自分が他の外人と話すと知らない単語が多すぎて会話になりませんが、BJだけは意思疎通ができるんですよね。

そんな彼が、今日から突然同じ家の住人になりました。

……いや、ホテルとってなかったんかーい(笑)

この日の夕食はまた自分がBBQグリルで肉を焼き、BJも加わって楽しい食事になりました。

2021年10月3日(日)~4日(月)|テスト&慣らし

今日はRIVA-RXPの慣らしとスキーの練習で、愛妻アケとBJとボディビーチに行きました。殿井さんと秋本さんは家に残って作業です。

ボディビーチには日曜日だからか、家族連れが多く550がたくさんいました。BJはRunabout NA(ランナバウトNA)に出るそうで、アメリカ人から借りたマシンのテスト。

それぞれがのテストが終わったころには夕方になっていたので、家に帰ってみんなでジャグジーとプールに入り、その後は夕食を食べてこの日は終わり。

翌日の4日(月)は、10時からBJの付き合いで元R & Dのビル・チャピンの自宅に行き、その後はボディビーチでテストと慣らし。そして16時からはいよいよライダーズミーティングです。

メインスタンドに大勢の選手が集められましたが、マスクをしているのは自分とアケとBJだけ(笑)。誰ひとりとしてマスクをしていないなんて、日本なら目を疑う光景でしょうね。日本人ってやっぱり真面目です(笑)。

その後、明日の朝イチからマスター・スキー・ストックのレースだと聞かされ、急いでマシンのECUをレース用のマップに書き換えてもらい、翌日は5時起きなので早めに就寝しました。

2021年10月5日(火)|先が読めないレーススケジュール

まだ辺りも薄暗い早朝5時に起床して、レースの準備を済ませたら家を出発。6時半に会場入りして7時からプララン、そして直後のレースが自分のマスター・スキー・ストックです。まだレースコースを一度も走っていませんが、なんとかなるでしょう。

この時期のレイクハバスは朝晩冷えるので、朝7時に水に浸かるのはなかなかの苦行。そんななかマスタークラスのおじさんたちはきちんとスタートラインに整列しているのに、待てど暮らせどはじまる気配がありません。

そして40分が経過したころ、ようやくマーシャルが来たと思ったら「悪いニュースと良いニュースがある」と。

まず悪いニュースは、今日のマスター・スキーのレースは無くなったと。これにはみんな大ブーイングです。早朝から寒いなかずっと水に浸かって待たされていたのに、挙げ句の果てにレースが無くなったなんてありえません。

各自抗議を続けますが、それを制すように「良いニュースは今からプラランを走れること。さあ、走ろう」と言い残して、マーシャルはコースの先導をスタート。走り出されてしまっては、口をつむぐしかありません。

渋々プラランを終えて、自分の英語の解釈が間違っていたかもしれないと念のためスケジュールを確認しに行ったら、マスター・スキー・ストックのクラスは消されていました。しかも明日なのか、明後日なのか、変更後のスケジュールは不明。最悪です。

BJのホルダーを頼まれていたので会場からも離れられない状況でしたが、「ガーコのエンジンが完成したから慣らしをしてほしい」と連絡があったので、BJには事情を説明してホルダーを変わってもらい自分はボディビーチへ。久しぶりのガーコは、日本で乗ったときよりもかなり速くなっていました。

ちなみにBJのレース結果は3位だったそうで、本人いわく「遅いマシンでよく頑張った」そうです(笑)。

そして今日キャンセルになったマスター・スキーのレースがいつやるのか何のアナウンスも無く、仕方ないのでレースディレクターに直接問い合わせたところ、夜7時に明日の予定が出ると言われました。

しかし当然のように夜7時になっても連絡は来ません。結局10時過ぎになって、明日もレースがないとわかりました。前日の夜10時にならないとレースの有無がわからないなんて、さすがにありえない事態です。

しかもIJSBAのホームページには予定が出ていないので、レースディレクターに連絡できないひとは当日の朝、レース会場でそれを知ることになると。まあ自分たちは当日の朝にレースがキャンセルされたので、もはや何も信用できませんが……。

今年は予定の変更が多すぎるし、毎晩こんなことが続くのかとイヤになりますね。

2021年10月6日(水)|ジェットトリムから思わぬスポンサード

結局今日は誰もレースが無いとわかったので、レイクハバスにオフィスを構えるJETTRIM(ジェットトリム)にお買い物へ。

日本のみなさんにもお馴染みのシートやデッキマットのメーカーで、自分たちは新型RXP-Xのマットを買いに行ったのですが、「新型のマットはまだ型取り用のマシンがないから発売していない」と言われてしまいました。

それなら自分のRIVA-RXPを型取り用として提供するので、デッキマットをタダで貼って!とお願いしてみたらあっさりOK。サポートしてあげると言ってくれました。

まさかのスポンサードです。

自分はタダでマットを貼ってもらえるし、ジェットトリムは新型RXPのマットを量産できるのでWin-Winですね(笑)。

バスタオルに刺繍までしてくれました!

そして夜もすっかり更けたころ、「どうやら明日はマスター・スキーのレースがあるらしい」というウワサが耳に入りました。いや、スケジュールがウワサで耳に入るって。

レースディレクターに確認したのですがすぐには返答がもらえす、やっぱり10時ごろになって「明日はレースがある」ということが判明。

ジュニアクラスのレーサーだったら、もう寝ている時間ですよ。もうちょっとしっかりしてほしいですね。

2021年10月7日(木)|自分のワールドファイナルもようやくスタート

朝5時に起床して、6時に家を出発。6時半に会場入りして7時からプラランと、ここまでは2日前とまったく同じスケジュールですが、今日は朝イチではなく6番目のレース。時間的に少し余裕があったので、スタートのタイミングを研究しながら出番を待ちました。

マスター・スキー・ストックのレースは今日だけでMOTO 3まであり(というか今年は全レース3ヒート制に。なんで?)、MOTO 1のグリッド決めはピンポン球を引き、書いてある番号が自分のグリッドになります。MOTO 2からは着順で好きな場所が選べます。

さあ、紆余曲折ありましたが、自分のワールドファイナルもここからようやくはじまりです。

研究の甲斐あってスタートのタイミングはバッチリで、インコースの1位で合流2位!その後も2位をキープしたままゴールできたのですが、実は途中でマーシャルにミスコースを指摘されていまして。

いちおうブイを回り直してイレイザーブイも回ったのですが、ミスコースだから失格だろうなと思いつつ、ブラックを振られていないからあわよくばと思いながら走りきった結果、やっぱりミスコースでMOTO 1の結果は最下位に(泣)。

気持ちを切り替えていきたいところでしたが、MOTO 2はスタートで出遅れてしまい、後方からのレースに。何台か抜きましたが、結局6位でゴール。

最後ぐらいはと気合いを入れ直したMOTO 3は、なんとインコースのホールショットで合流も1位。このクラスで、しかもレンタル艇でホールショットが取れるとは思っていなかったので、めっちゃうれしかったです!

しかもスキークラスでははじめてのホールショットだったので、走っていてすごく気持ちが良かった。とはいえこんな夢物語がいつまでも続かないのは、自分もよくわかっています。同じクラスには元世界チャンピオンのマイク・クリッペンスタインも走っていますから、あっという間に抜かれるはず。

そう思いながら走っていたのですが、1周目が終わり、2周目が終わっても自分がトップのまま。

あれ? このままゴールできちゃう?

そんな気になってきたところで、合流でインからクリッペンスタインが視界に入ってきました。まあ、そりゃあそうよね。

猛烈にアタックしてくるクリッペン。

とりあえず合流は抜かれまいと頑張って防ぎましたが、その後あっさりインから抜かれて2位に。さらにもう1台速いライダーに抜かれてしまい、結局3位でゴールとなりました。

MOTO 1のミスコースが無ければ、3位以内には入れそうだったので悔しい限り。おそらく10位以内でプレートがもらえればラッキーぐらいの順位でしょう。

そして今年は表彰式が木曜日と日曜日にレース会場でおこなわれるということで、レース終了後も会場で待たされることに。今までは別会場での表彰式だったのですが、コロナの影響でしょうか。

明日はアケのレースがあるのでみんなはボディビーチに行ってしまい、自分とBJだけで表彰式までずっと待機。MCの話がやたらと長く2時間以上は待たされて、ようやくマスター・スキー・ストックの表彰に。結果は7位でした。

プレートもらえました。

そこからさらに1時間以上かかって、BJがランナバウトNAで3位で呼ばれました。おめでとうBJ!

自分はそこからみんなのもとに向い、BJはみんなの夜ご飯を買い出しに行ってくれました。

ボディビーチでは3人がかりで慣らしをしていましたが、まだ5時間しか終わってないそうです(笑)。さてさて、どうなることやら。

2021年10月8日(金)|アケさんのライバルは世界チャンピオン

今日は愛妻アケさんのレースDay。5時起きで6時に出発、6時半からインスペクションを受けて、プラランを走っていよいよレースです。

アケが出るのはPro Am Runabout Superstock(プロアマ・ランナバウト・スーパーストック)で、プロアマとかスーパーストックとか付いてますが、ひと昔前のPro Runabout OPEN(プロ・ランナバウト・オープン)に相当するクラス。

GPが主流になる前の最高峰クラスで、今回も出ているのはGPライダーばかり。ゼッケンだけ聞いても誰だかわかるような#66(モハメド・バーバイエ)、#5(ジョルジ・カーサ)といった名だたるメンバーで、自分がこのあとGPクラスで戦うメンバーばかり。

参加台数も11台となかなかで、そんな相手に慣らしも終わっていないステージ1のRIVA-RXPでは太刀打ちもできないでしょう。

そもそもアケは本来別のクラスに出場予定でしたが、箱を開けてみたらRIVA-RXPが後方排気のデュアルエキゾースト仕様になっていて、レギュレーションの関係でこのクラスへの強制エントリーとなりました。それ以外はノーマルなのに(泣)。

しかしこのクラスは昔から「速いマシンは壊れる」と言われているので、壊れる可能性の低いRIVA艇なら勝機はあるはず。周りにどんどん壊れてもらって上位に食い込もう作戦です(笑)。

結果はMOTO 1が9位、MOTO 2が6位、MOTO 3が6位で、総合6位。元世界チャンピオンのカーサは7位だったので、「カーサに勝った♪」とアケは喜んでいました(笑)。

アケさんがんばりました。

2021年10月9日(土)|本命レースがスタート

今日はいよいよ自分の本命レース、Pro Runabout GP(プロ・ランナバウトGP)のレースです。

この日も5時起きで6時に出発して会場入り。まずはスケジュール表を確認すると、自分のクラスは今日3ヒート走ることになっていました。

このスケジュールはかなり厳しいです。

というのも、3ヒート走れるほどGPマシンの部品には耐久性がありません。そのためレースの合間に交換する必要があるのですが、1日3ヒートだとレース間が短すぎて間に合わない可能性が高い。

せめて今日2ヒート走り、今夜部品を交換して明日1ヒートならいけるけど、こればっかりはどのライダーも同じ条件なので仕方ないか……。そう思っていたら、クウェート勢も同じ考えでオフィシャルに抗議していたようです。そして今日2ヒート、明日1ヒートに変更になりました(笑)。

散々スケジュール変更に振り回されてきたけど、これは助かった。ということで今日は2ヒート走ることになりました。

GPのレース前にスラロームの世界チャンピオンを狙って計測にチャレンジしたのですが、自分の前にいたカーサがブイ間を飛んでいるような圧倒的な速さ。

それにくらべて自分はすべてのブイでキャビテーションが止まらず、まったく勝てる気がしませんでした。あの小さいコースと短いブイ間でキャビらないのは素直にスゴイ。

そんな余談もありつつ、いよいよプロ・ランナバウトGP。

壊れたら一巻の終わりなので、とにかくマシンを壊さず、1位は取れなくても2位から3位を3回取れば総合で優勝できるだろう、という作戦で挑みます。

MOTO 1のグリッドはアウトのアウトだったので、一番良いグリッド。スタートのタイミングもバッチリでアウトのホールショットから、インからきた#66バーバイエに先を越されて合流は2位でした。

その後は焦らず2位をキープして、予定どおり8割の力で抜かれずに走っていたのですが、半分を過ぎたころにインタークーラーの配管が抜けて失速。

結果全員に抜かれてしまいましたが、自分のRIVA艇を借りてこのクラスにエントリーしていたBJは自分を抜かずに待っていてくれました(笑)。

その後なんとか巻き返しましたが、結果は6位でゴール。昼休みに配管抜けの対策を施し、午後のMOTO 2に挑みます。

◇ ◇ ◇

MOTO 2はスタートが出遅れてしまい、アウトの2位で合流は4位。2周目でインから1台抜いて3位に浮上しましたが、その後2台に抜かれて結局5位でゴール。

終盤に抜かれてしまった原因は、燃料が減ったときにノーズの食いが悪くなり、スロットルを開けると外に膨らんでしまったことでした。燃料消費量がとてつもないので、レース中に重量バランスが変わることも考えて操縦安定性を見直さないとダメですね。

後半ペースを上げるどころか下がってしまったので、すぐに戻って対策。ライドプレートを少し下げてノーズが上がらないようにしたので、これで明日はいけるはずです。

↑ MOTO 1のオンボード動画です ↑

2021年10月10日(日)|最後は因縁のレースで世界一に挑戦

今日もいつもどおり、早朝からレース会場入りです。今日のレースは7番目なのでちょっと時間があるのですが、出番が近づくにつれて風がどんどん強くなっていき、気づけば水面は大荒れに。

隣にいたカーサもフラップを下げたり、取ったり、ノズルを下げたり慌ただしく対策をはじめました。自分たちもフラップを下げてテストしてみたのですが、たしかに跳ねなくなったのでそのままレースに臨むことに。

MOTO 3のグリッドは、水面が荒れているならストレートが短いインの方が良いと思いはじめてインコースをチョイス。自分よりイン側には3台いて、バーバイエやカーサもいます。

スタートでカーサがフライング気味に出たのでレッドフラッグかと思ったのですが、そのまま続行でイン側の3台に先を越されてインコースの4位。合流は7位か8位と後方からのスタートです。

そこから追い上げようと気合いを入れたのですが、ノーズが食い過ぎて曲がるたびに潜ってしまいます。ドロップノズルを下げ、ライドプレートを下げ、直前にフラップまで下げてしまったので、さすがにノーズが食い過ぎる調整に。

コーナーでスロットルを開けてもノーズが潜るばかりで、まともに曲がれません。しかも潜った際にフロントフードが水圧で飛んでしまい、レイクハバスのもくずに……。フードが無くてはこれ以上走れないので、そのままインスペクションを受けてテントに戻りました。

こんなことが起こるんだなってことが、毎年起こりますね(泣)。

焦ってフラップを下げたのが原因だったようにも思いますが、今となっては仕方ありません。最後に因縁の耐久レースが残っているので、そこで全力を尽くします。

◇ ◇ ◇

いよいよ泣いても笑っても、2021年のワールドファイナルで最後のレースが。

最終ヒートのPro Am Runabout Endurance(プロアマ・ランナバウト・エンデユランス)です。

前回出場時はMOTO 1で1位のはずがリザルトで2位になっていて、MOTO 2で1位になればチャンピオンだから頑張ろうと言っていたら日没でMOTO 2がなくなり、泣く泣く世界2位になってしまった因縁のクラスです。

とはいっても今回はほぼストックのRIVA-RXPなので、実際にレースで乗ったアケとBJは口を揃えて「勝てるマシンではない」と言っています(笑)。

まずはコースもわからぬまま耐久レースのライダーはグリッドに並び、1周だけ練習走行を走ります。その後マシンから降りて、ルマン式スタートで走ってマシンに飛び乗り、エンジンを掛けてスタート。

自分はスポーツモードに変更する手間もあって、予想どおりビリスタートに。耐久用の速そうなマシンがたくさんいるなかで、ストックマシンでどこまで戦えるか腕試しです。

レースは30分+1周ですが、かなり頑張って追い上げたところで15分経過のフラッグが目に入りました。「まだ半分か……」と思うとドッと疲れましたが、逆に抜くチャンスもたくさんあるとポジティブに考えてひたすら頑張ることに。

コースが小さく同じライダーを何度も何度も抜いたので、もはや順位はまったくわかりません。ただ抜くことはあっても、抜かれることはなかったのでそれほど悪い順位ではなさそう。

30分経過を告げるホワイトフラッグが振られ、最後の1周を走りきると自分にチェッカーフラッグが振られたので、1位だった! と喜んでゴール。

でもテントに戻ると、自分はたぶん4位じゃないかとみんなは言っています。しかしリザルトは自分が1位。うーん、いったい何位なんでしょうか?

15分間の給油&休憩タイムのあと、すぐにMOTO 2がスタート。今回も30分+1周ですが、みんなバテているようなのでチャンス到来です。

MOTO 1で速かったのはバーバイエの弟、#38モハメド・アルバ。おそらく彼のマシンがぶっちぎりだったと見ていたみんなが言っていて、あとはULTRAにも何台か速いマシンが3台ほどいたようです。

そのうち2台はインドネシアの有名な#19エアロと#5アクサのアズワー兄弟。前年度のJET SKI WORLD CUP(ジェットスキー・ワールドカップ)とJET SKI WORLD SERIES(ジェットスキー・ワールドシリーズ)でチャンピオンに輝いた耐久レースのスペシャリスト、ジャン・ブルーノ・パストレロが作ったスペシャルマシンにふたりとも乗っているそうです。

この4台を抜けば、世界チャンピオンは間違いないとのこと。

MOTO 2もルマン式スタートでしたが、今回は7番手ぐらいの先頭が見える位置でスタートできました。そして少しずつ順位を上げていき、ようやく3番手を走るエアロの背中が見えてきました。

しかしマシン性能の差が顕著で、なかなか抜けません。ULTRAは全開のまま外から大きく回り込んでくるのですが、自分はRXPなのでインベタでブイをかすめながら小さく曲がってコツコツと少しずつ距離を詰めていきます。

抜くところまでいけずに苦戦していると、そのあいだにアルバにラップされてしまいました。

そのままアルバはすぐ前を走っていたエアロも抜きに掛かったので、その隙に自分もアルバのうしろを付いていきインからエアロを抜きました。完全にどさくさに紛れて抜いた感じです(笑)。

そして残り5分の表示がでたときにエアロに抜き返され、さらにも一度自分がラップしたのですが、また外から抜き返されそうに。そのとき自分のイン側に1台遅いライダーがいたので、アウトに逃げて抜いたのですが、運悪くエアロはアウトから自分を抜き返そうとしていたようで、自分がアウトに出てきたのでビックリして落水。最終ラップを終えて戻ってきたらフォール前でエアロが落水していて驚きました。

とりあえずMOTO 2はなんとか3位でゴールです。レース後にエアロに「大丈夫か?」と声をかけたら「クレイジー」とだけ言われました(笑)。

レース終了後はそのまま会場で長~い長~い表彰式が始まります。というか耐久レース中も見ながら表彰式ははじまっていたそうです。

ここではじめて日本人ライダーが全員集合したのですが、若手のホープ片野丈一郎くんはPro Sport GP(プロ・スポーツGP)で2位に。山本汰司くんはPro Freestyle(プロフリースタイル)で2位になりました。

自分は耐久が惜しくも3位、GPは5位、スラロームは2位でした。スラロームは今年もカーサが1位で、彼に勝ったひとはいません。カーボンでめっちゃ軽く作った春に、ビッグパワーのターボが必要だとカーサは言っていました。

というわけで、今年のワールドファイナルは全行程が終了。家に帰って急いで帰り支度と掃除です。

2021年10月11日(月)~13日(水)|無事陰性で日本へ帰国

朝から慌ただしく掃除と片付けを終え、10時にレンタルハウスを出発。実はレイクハバスにいるあいだ、足車としてU-HAULでピックアップトラックをもう1台借りていたのでまずはそれを返却に。それから寄り道をしつつロサンゼルスに向い、到着したのは夜の8時過ぎでした。

今夜もニューガーデナホテルで一夜を過ごし、翌日の12日は朝は日本人ライダーみんなで合流してPCR検査へ。

検査してもらったのは日本人が経営している病院でしたが、院内には入れてもらえず外で鼻に綿棒を突っ込まれて終了。30分後に結果が出て、無事に全員陰性でした。

それから倉庫で日本に送り返すマシンや荷物をコンテナに詰め、2艇積みのトレーラーも返却。時間がだいぶ余ったので近くのモールなどでお土産を買いにあちこち行ったあと、この日は近くの韓国料理屋へ。

なぜか突然スンドゥブチゲが食べたくなりまして(笑)。韓国人のお店だけあってめっちゃ美味しかったです。

そして13日は無事にみんなで日本に帰国。帰国後の空港でもPCR検査を受けましたが、全員陰性で無事に日本へ入国できました。

というわけで、自分のワールドファイナルはこれにて終了。

Runabout Slalom
2位

Pro Am Runabout Endurance
3位

Pro Runabout GP
5位

Master Ski Stock
7位

今回も応援していただいたスポンサーさま、読者のみなさま、ありがとうございました。自分の結果はこのとおりで、愛妻アケはPro Am Runabout SuperStockで6位という結果となりました。

なかなか世界一には手が届きませんが、2022年1月にはタイでのジェットスキーワールドカップも控えています。

今回の雪辱を晴らすべくチャンピオン目指して頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします!

#1 POUND ONE
#86 生駒 淳

 

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