2014年に誕生した、BRP Sea-Doo SPARK。約2.8mの全長と、わずか900ccのエンジン。標準ではフロントストレージもないミニマルなデザインと、乾燥重量で200kgを切る超軽量──。
一般的な水上バイクの構成要素を一度すべて分解し、異なる価値観と新しいフォーマットで再構築したのが、SPARKだと言えるだろう。
特筆すべきは、やはりその軽さ。
一般的な3人乗りモデルなら、陸上で少し動かすだけでもヒーコラしていたのに、SPARKならスイスイ。走り終えてトレーラーのレールにノーズを乗せ、ベルトをかけてウインチで船体を巻きあげるときもラクラク。こんなとき「軽いって、正義だな」と、シミジミ思う。
水上でもその軽さは際立っており、ドッシリと、エンジンパワーで押し切るような走りではなく、ヒラヒラと軽快に、自在に操る感覚が味わえ、実に無理がなく、心地よく走ってくれる。
水上バイクの魅力を伝える際には「強烈な加速」や「圧倒的なトップスピード」「シャープな旋回力」「アグレッシブな走り」など緊張感のあるタイトな言葉が並ぶことが多いけれども、そんなマッチョな世界観と切り離された、異なる水上バイクの魅力や楽しさがあることに気づかせてくれるのが、SPARKではないかと思う。
SPARKに乗っていると「そんなにあくせく走る必要ないよー」「そんなに握らなくていいよー」という声が、どこからか聞こえてくる(ような気がする)。
そんなときは前傾姿勢をやめ、リラックスして背筋を伸ばしてみよう。世界が広く、輝いて見えるはずだ。
肩の力を抜いて、ゆる~く気軽に楽しめる。
BRP Sea-Doo SPARKとは、そんなモデルだ。
Polytec(ポリテック)
SPARKのハル素材は、多くの水上バイクに使われるFRP(ガラス繊維強化プラスチック)ではなく、Polytec(ポリテック:ガラス長繊維強化ポリプロピレン)が採用されている。
ポリテックは軽量で耐衝撃性と剛性にすぐれ、素材自体に着色できるため、ひっかき傷などが目立ちにくいという特徴がある。さらに、リサイクル可能な素材でもある。
このポリテック製のアッパーハルとアンダーハルは接着ではなく19本のボルトで止められており、専門知識を持った販売店ではアッパーとアンダーを分離してのメンテナンスが可能となっている。
左舷側にはメンテナンスハッチがあり、バッテリーやクーラント液の管理が可能に。右舷後方に、丸形のオイルゲージ用ハッチがある。
一般的な水上バイクはシートを外すとエンジンルームにアクセスできるが、SPARKはご覧のように、開口部が一切無い構造。エンジンルーム内を水洗する際は、メンテナンスハッチからおこなう。
写真右側に見えるのが、シート下に隠れている給油口。中央くぼみ部分には船検証などの書類を収納できるがそのままでは濡れてしまうので、防水ケースなどを用意した方が良いだろう。
EXOSKEL design
フロントは船体の構造に関わる最小限の要素となる、2本の柱で構成。軽量化されているだけでなく、力強く、モダンなデザインとなっている。オプションで、ストレージのボックスとフタを装着可能だ。
ヒートエクスチェンジャー
Sea-Dooのエンジン冷却は、ライドプレートを熱交換器としてクーラント液を内部循環させるクローズドループ方式が採用されている。SPARKのエンジン冷却もクローズドループ方式だが、熱交換はライドプレートではなく、ハルの前後方向に伸びる金属製のヒートエクスチェンジャーでおこなっている。ちなみに熱交換をおこなっているのは右舷側(写真左側)で、左舷側はエンジンマウントとハルの補強を兼ねた強化プレートとなっている。
なおBRP Sea-Dooのエンジン冷却はクローズドループ方式だが、排気系統の冷却は、外部から水を取り込んでおこなっている。そのため海で乗った後には、排気の冷却経路を洗浄するフラッシングが必要になる。
エンジン
小型・軽量な水冷4ストローク直列3気筒ROTAX 900 ACE-90エンジンは燃費性能にすぐれ、BRPの社内試験によると、1時間あたりの燃料消費量は、わずか9リットル。燃料タンク容量が30リットルと小さくても、他モデル同等の航続距離を実現している。
ゲージ
ハンドル下に、エンジン回転数や速度を表示する、コンパクトな液晶メーターを装備。エンジン始動時は加速の緩やかなツーリングモードになっており、オレンジのモードボタンを押し続け、ブザー音が2回鳴ったあとに再度、モードボタンを押すことで、スロットル操作に俊敏に反応するスポーツモードへと切り替えられる。
iBR
改良が重ねられ、現在は第3世代となった、業界初の水上ブレーキ&リバースiBRも搭載。両手をハンドルに置いたままでフォワード・ニュートラル・リバースのシフトとスロットル操作ができるため、桟橋への接岸時など、低速で繊細な操船が求められる場面で重宝する。
オプション装備
豊富なオプション装備が用意され、自分だけの1台を作りあげる楽しみが味わえるのも、SPARKの魅力だろう。なかでも、ストレージボックスとフタがセットになったフロントストレージビンキットは、ぜひとも購入しておきたいオプションだ。
LinQアタッチメント(オプション)
クーラーボックスや防水バッグなどのLinQアクセサリをワンタッチで接続できる、LinQアタッチメントをオプションで装備可能だ。なお通常のLinQアタッチメントは船体の横方向に装着されるが、SPARKシリーズ2upは、縦方向となる。税込価格│1万2980円(2up用)
スペック
モデル | SPARK | |
価格(税込) | 98万9000円 | |
全長 | 2790mm | |
全幅 | 1180mm |
|
全高 | 1045mm | |
乾燥重量 | 192kg | |
燃料タンク容量 | 30L | |
エンジン | ROTAX 900 ACE-90 | |
最大出力 | 90hp | |
吸気方式 | 自然吸気 | |
排気量 | 899cc | |
冷却 | クローズドループ(CLCS) | |
リバース | 電動iBR | |
燃料 | 無鉛レギュラーガソリン | |
定員 | 2名 | |
最大積載重量 | 160kg | |
グローブボックス容量 | 1.6L | |
フロントストレージ | 27L(オプション) | |
ハル | SPARKハル | |
ハル材質 | ポリテック |
- スリムシート
- シートストラップ
- ハンドルグリップwithパームレスト
- トーフック
Sea-Doo公式ホームページ
BRP Sea-Doo 2021年モデルラインアップ(HOT WATER Webマガジン)