業界最大を更新する1898ccへ
2008年にヤマハが発表した新型エンジンは、従来の1052ccから1812ccに排気量をアップ。ヤマハ初の過給器搭載ということもあり、当時は大きな話題となりました。今ではこの大排気量エンジンが、ウェーブランナーの大きなアドバンテージとして定着しています。
そして今なお排気量の業界最高値は更新されていませんが、2024年モデルでヤマハは1.8Lエンジンの大幅なリニューアルを発表。最大のトピックスは、1.9Lへの排気量アップです。
5%の排気量アップと
15%の高出力化を実現
各部の紹介をする前に、過給器や各部のチューニングで最高出力(の数値)を大きく向上した方がインパクトがあるのでは? と素朴な疑問が頭に浮かびましたが、「ヤマハの主力エンジンであり、すべてのベースとなるのが自然吸気エンジンですから、まずはその性能向上に取り組みました」とエンジン開発を担当された諸田高一郎さんにごもっともな回答をいただきました。
というわけで1812ccから1898ccに排気量がアップしたわけですが、最高出力も170馬力から195馬力にアップ。
これを実現したのが吸排気やシリンダヘッドの見直しで、インテークマニホールドは吸気の脈動に合わせて管長を最適化することで、より多くの空気をシリンダ内に送り込むことが可能に。
シリンダヘッドは燃焼室形状が変更され、こちらも空気の流入量を増加。
エキゾーストマニホールドはマフラーの集合形状が従来は4本から1本に絞られる形でしたが、4本から3本、そして3本から1本とすることで排気管長を最適化。
これらの改良により、従来エンジンから5%の排気量アップながら15%の出力向上を実現しています。
また1.9Lエンジンはエンジンカバーのデザインが変更され、より洗練されたスタイリッシュな外観に。
黒い部分には木の繊維を使用した新素材の「セルロースナノファイバー」を採用しており、リサイクル性が向上。重量も25%ほど軽量になっています。
この素材が運送機器に採用されるのは世界初の試みで、今後も別の部品や製品への使用が増えていくことが期待されます。
加速性能の向上と
騒音・振動を低減
排気量アップと高出力化を実現した1.9L HOエンジンですが、従来モデルとの性能差は『加速』でもっとも体感できるでしょう。
初速から中間、高速にいたるまで全域の加速性能が向上しており、従来モデルが100m走るあいだに110m以上に到達するほどの差があるとか。
旋回後の出足も良くなっているため、よりクイックなコーナリングが可能になったといえるでしょう。
タンデム走行時も力強く、スムーズで余裕のあるライディングが可能になりました。
最高速も従来モデルとくらべて若干向上しています。
また走行性能の向上だけでなく、『騒音と振動の低減』もこのエンジンの注目すべきポイントのひとつです。
ヘッドカバーの形状変更によりヘッド周辺のメカノイズが低減され、カムチェーン室には新たに防振ボルトを採用。
新設計のウォーターボックスで排気音を低減するなど、ノイズ&バイブレーションを可能なかぎり減らすことで快適な乗り心地を実現しています。
「1.9Lのパワフルなエンジン音は引き続きお楽しみいただけると思いますが、そのうえで乗ったひとが不快に思う音や振動は感じにくくなっていると思います」と諸田さんも自信の仕上がりです。
2024 FX CRUISER HOは
大型ディスプレイを採用
2024年モデルのFX CRUISER HOは、多機能で視認性にすぐれる7インチのコネクスト・マルチファンクションディスプレイを採用。
従来の5インチからサイズアップされました。
速度と加速を設定できるドライブコントロールには、新たに燃費性能を優先する「エコノミーモード」と、トーイング時に活用したい「トーイングモード」が追加。
船体姿勢を自動制御するオートトリムも採用されています。
ウェーブランナーの
次世代を担うエンジン
今回のリニューアルに伴い電装系やセンサーも一新され、部品点数の削減やエンジンオイル量の最適化によりサービス性や信頼性もさらに向上。
この新しい1.9L HOエンジンは、すべての面で進化したウェーブランナーの次世代を担うエンジンといえるでしょう。
ちなみに先行してFX CRUISER HOを試乗したウェーブランナー販売店のなかには「現行の過給器モデルと遜色ない」と太鼓判を押すひともいるほど。
ひとたびスロットルを握れば性能の向上を如実に感じられるため、機会があればぜひその性能を体感してみてください。
FX CRUISER HO
Specifications
※スペックは変更の可能性があります