近年ではインターネットオークションなどの個人売買で数多くの中古の水上バイクが取引されているが、それに伴い、トラブルも増加中。中古の水上バイクの個人売買で失敗しない、後悔しないために気をつけるべきこととは?
中古艇を買うなら、専門ショップが安心
中古で水上バイクの購入を考える場合、大きく2つの選択肢がある。ひとつは、専門ショップから購入すること。そしてもうひとつは、インターネットオークションを含めた個人売買だ。
個人売買のメリットは、なんといっても船体価格の安さ。オークションサイトでは時にビックリするような破格値で中古の水上バイクが取引されているので、魅力的に映ることは否めない。
ただし水上バイクは、乗り方や乗り場所(淡水か海水か)、日常のメンテナンスの内容や頻度で状態に大きな差が生じ、さらに登録や検査が必要なノリモノだ。個人売買で船体価格だけに注目して購入してしまうと、目に見えない部分の状態が悪かったり、名義変更に手間取ったり、船舶検査を見落としたりする危険があることは、忘れないでほしい。
その点、専門ショップから購入すれば状態への不安も少ないし、名義変更や船検で困ることもないだろう。
さらに、購入後の遊び方やメンテナンスも含めて安心が担保されるので、断然オススメだ。
とはいっても、個人売買での中古の水上バイク取引が増えているのも間違いなく、それに比例して、トラブルも増えているという。インターネット個人売買で船体の状態を見極めるのは難しいが、せめて名義変更や船舶検査に手間取らないように、いくつかのアドバイスを送ろう。
水上バイクの個人売買の注意点
個人売買で水上バイクを取引する場合、買う側だけでなく、売る側にも注意してほしいことがある。それは、売ったらそれで終わりではないということ。後日、名義変更が完了したかの確認が必要になることを、お忘れなく。
水上バイクを個人売買で売る場合
新所有者に名義変更が必要なことを必ず伝え、下記の必要書類を用意して新所有者に渡さなければならない。
新所有者への名義変更が完了しないと、旧所有者に船舶検査の受検案内が届いたり、売却済み水上バイクが事件・事故などのトラブルを起こした場合、旧所有者の情報が海上保安庁や警察に提供されてしまう。
売却後は名義変更が完了したか、新所有者への確認も必要だ。
・必要書類
- 譲渡証明書(JCIのホームページからダウンロード可能)
- 印鑑証明書(3か月以内に発行されたもの)
- 住民票など(住所変更がある場合)
- 船舶検査証書
- 船舶検査手帳
中古の水上バイクを個人売買で購入する場合
購入を決める前に船体の状態を詳しく説明してもらうことはもちろん、船舶検査の時期(定期検査と中間検査)や、名義変更に必要な書類が揃っているかも確認すること。なお、書類の不備などで訂正や押印が必要となる可能性もあるので、取引終了後も旧所有者と連絡がとれるようにしておこう。
さらに購入後は、登録制度に関しては「変更・移転登録」(所有者名義変更)だけでなく、「船舶検査証書の所有者の書換」の手続きも必要となる。もちろん検査切れの場合は、検査を受けなければならない。
詳しくは、JCIホームページの「中古艇購入(名義変更)」で確認してほしい。
日本小型船舶検査機構(JCI)ホームページは、こちらをクリック
名義変更をしないで航行すると……
30万円以下の罰金
水上バイクは、船舶検査の受検が必要。
検査を受けずに航行すると、法令に基づく罰則が適用される
インターネットオークションなど、個人売買で水上バイクを買った人のなかには、船舶検査の存在を知らないひともいるようだが、クルマに車検が必要なのと同じように、水上バイクは、船舶検査を受けて合格しなければ航行できない。違反すると罰則の対象となる。
検査を受けないで航行すると……
1年以下の懲役または50万円以下の罰金
次回検査時期指定票で、検査時期の確認を
中古で水上バイクを購入する際はもちろん、次にいつ検査が必要なのかは、常に把握しておきたい。そんなときは、船舶検査手帳か、船体に貼られている船舶番号(船舶検査済票)を確認しよう。
一番右側の『次回検査時期指定票』には、定期検査または中間検査の受検期限の早い方の年月が表示されているので、ひと目で次の検査時期がわかる。
水上バイクの場合は6年ごとに定期検査、その中間(3年目)に中間検査(簡易な検査)がある。この他にも改造、修理をおこなったときにも検査が必要となる場合がある。
臨時検査が必要となる改造・修理など(一例)
改造・修理などの部分 | 臨時検査の必要な改造などの範囲 | |
---|---|---|
船体 | 船体の主要部 | 船体の強度、水密性、防火性および復原性に影響をおよぼす改造または修理をする場合 |
内部浮力材 | 内部浮体の取付位置または浮体量の変更により、浮沈性能に影響をおよぼす改造または修理をする場合 | |
機関 | 機関の主要部 | 機関本体やクランク軸を取り替える場合 |
機関の各部品 | 圧縮比、排気効率を高める、点火時期を変えるなどの改造をおこない、出力が増大する場合 | |
操舵系 | 操船ハンドル、プッシュブルワイヤ、ポンプノズルなど | 標準仕様に比べ、操縦性に著しい影響をおよぼす改造をする場合 |
その他 | プロペラ軸 | 交換、修理などをする場合 |
インペラ | 交換(出力37kW[50PS]を超える機関のもの) |
- 定期検査または中間検査の時期に上記表に該当する改造・修理を実施された場合は、臨時検査の手続きは不要
- 改造などをおこなう場合は、あらかじめ最寄りの支部に相談を
- 上ハルまたは下ハルを取り換えた場合は、臨時検査が必要
- 臨時検査を要しない改造・修理のなかには、次回の定期検査または中間検査の際に海上試運転などが必要になるものがある
水上バイクに乗る際は、
国の安全基準に適合した救命胴衣を着用しなければならない
水上バイクに乗る際は、救命胴衣の着用が義務づけられている。
さらに救命胴衣なら何でも良いわけではなく、国が定める安全基準に適合したものを着用しなければならない。
具体的には、桜マークのものを用意する必要がある。
ただし、水上バイクの船舶検査時に用意した救命胴衣の検査を受け、安全基準を確認し、JCIマークが表示されているものも使用できる(救命胴衣単体の検査も可能だが、要手数料)。
上記マークのないレジャー用やマリンスポーツ用ライフベストは安全基準への適合性が確認されていないので、使用できない。
水上バイクに必要な法定備品
- 小型船舶用救命胴衣(乗船時は常時着用)
※笛の付属がない場合は、別途、笛が必要 - 係船用ロープ
- 小型船舶用信号紅炎1セット(2本)、または船検合格の際に認められた携帯電話
記事作成協力:日本小型船舶検査機構(JCI)