水上バイクが走れるのは陸岸から2海里以内(約3.7km)というのは、特殊小型船舶操縦士免許を持っている人ならご存知でしょう。
この「陸岸から2海里以内」はかなり大雑把な表現で、正確には、以下のようになります。
沿海区域(限定沿海区域) ただし、安全に発着できる任意の地点から15海里以内の水域のうち、当該地点における海岸から2海里以内の水域及び船舶安全法施行規則第1条第6項(平水区域)の水域のうち海岸から2海里以内の水域に限る。
母船に搭載されている場合、沿海区域内で母船から半径2海里以内の水域。
出典:日本小型船舶検査機構
沿海区域(限定沿海区域)での
水上バイクの航行区域
- 沿海区域とは
原則として北海道、本州、四国、九州の各海岸から20海里以内の水域や特定の島や半島の海岸から20海里以内の水域をいいますが、海岸から20海里を超えた水域で20海里以内の水域と同様の気象・海象条件と認められた水域も含まれています。(船舶安全法施行規則第1条第7項) - 限定沿海区域(可搬型小型船舶)とは
水上オートバイその他の自動車等で運搬し使用される可搬型小型船舶は、安全に発着できる任意の地点を起点とする航行区域を選択することができます。
上記の沿海区域(限定沿海区域)での水上バイクの航行区域について、わかりやすくしたのが下図です。
「安全に発着できる任意の地点」とは、水上バイクを下架した地点です。その地点から半径15海里(約27.7km)以内、沖合2海里以内が航行区域になります。
ですから、たとえば下図のように陸地から2海里(赤斜線)とA島から2海里(青斜線)で重なる部分があっても、下架した地点から沖合2海里を超えてしまうので、A島へは渡れません。(一例:伊豆半島~初島)
母船に搭載されている場合の
水上バイクの航行区域
沿海区域内であれば、母船から半径2海里の範囲を航行できます。ただしここで言う「母船」とは、単に水上バイクに伴走するボートではありません。「母船」となるボートは、積載能力や水上バイク搭載時の復原性など必要なすべての要件を満たしているかどうか、日本小型船舶検査機構の検査などが必要になります。また、搭載する水上バイクも航行区域の変更が必要になるため、特殊なケースと言えるでしょう。
伴走ボートは母船ではないことを、しっかり覚えておきましょう。
平水区域での
水上バイクの航行区域
- 平水区域とは
湖、川及び港内の水域のほかに東京湾など50を超える水域が定められている。これらの水域は、年間を通じて比較的静穏で、地理的には陸岸により囲まれていて、その開口は直接外海に面して大きく開いていないことなどの波や風の影響が少ない水域。(船舶安全法施行規則第1条第6項)
平水区域では、陸岸から2海里以内という点は沿海区域と同じですが「安全に発着できる任意の地点から沖合2海里以内」と「安全に発着できる任意の地点から半径15海里以内」の制限がなくなります。
そのため平水区域であれば、水上バイクを下架した地点から半径15海里以上も航行可能で、また陸地から2海里(赤斜線)とA島から2海里(青斜線)で重なる部分があれば、A島へ渡れます。ただしこの場合は、必ず重なる部分を航行する必要があります。
航行区域を調べるには?
水上バイクで走る場所が沿海区域なのか平水区域なのかを調べるのは、日本小型船舶検査機構の「航行区域参考図」が便利です。
なお航行区域参考図では「沿岸区域」となっていますが、沿岸区域とは、沿海区域のうち海岸から5海里以内の水域と平水区域を指しています。
航行区域検索ページ(平水・沿岸)
沿海区域も平水区域も
航行前にローカルルールの確認を
沿海区域も平水区域も、地域により独自のローカルルールを定めて、航行を規制していたり禁止している場所があります。水上バイクで走る前には、必ずその地域のルールを確認しましょう。
記事作成協力:日本小型船舶検査機構(JCI)