一時休業を経て
水上バイクのレースに復帰
HWSM ボートレーサーになる少し前、水上バイクのレースは「一時休業」と言っていましたが、2022年から本格的に復帰されて2023年も大活躍でした。戻って来たのには何か理由が?
小原 水上バイク楽しいから、という一言に尽きます。ある程度ボートレースでの要領を掴めてきて、少しずつ自由に使える時間が増えてきた、というのもありますね。何よりやっぱり水上バイクが好きですし、楽しいし、どうせやるんだったらレースで走りたいっていう気持ちがあったので、本業をないがしろにしないレベルでやっています。
HWSM 水上バイクのレースは楽しめていますか?
小原 すごく楽しいです。とにかく自分の好きなことができているので、やっぱりそれが一番なのかなと感じています。
HWSM 「将来はプロのレーサーに」という夢が叶い、さらに大好きな水上バイクのレースも続けられて、充実していますね。
小原 ボートレーサーになって、レースを人生にできているっていうのが自分にとって一番(の幸せなこと)。もちろん毎日が充実しています。
HWSM ボートレーサーになったらスポンサードを受けてのレース活動は難しいかも、と以前は言っていましたが、現在はどのような体制でレースに臨まれているのでしょうか?
小原 デビュー当時はそう思っていたんですけど、実際はボートレースの有名選手がスポンサードを受けているメーカーや企業のワッペンを服に貼ったりしているので、問題なかったみたいです。
自分も今はボートレーサーになる前からお世話になっていたSKU46HレーシングというチームでPWCのレース活動をしていて、エルフ・マリン・ジャパンさんだったり、ジェットパイロット・ジャパンさんやファクトリーゼロさんがまた応援するよと言ってくださったので、サポートを受けながらレース活動ができています。
ボートレーサーとして活動するときもお世話になっているメーカーさんのアパレルを着るようにしているので、以前より周知できる場所は増えたと思います。
HWSM 小原選手のレースマシンについて教えてください。
小原 Pro WatercraftのPro Forceというマシンに乗っています。アメリカのアリゾナ州レイクハバスにあるメーカーが手がけるマシンで、2016年に「これから軌道に乗せていきたい」というタイミングで代表のクリス・ハゲストさんから声をかけてもらいました。
HWSM Pro Forceが他のマシンより優れている部分は?
小原 とにかく安定していて、直進も旋回中も安心して乗れるところです。失敗するリスクが感じられないと言うんですかね。とにかく信頼できるから、レースでも自分の実力を120%ぶつけられます。
グリップが足りないなとか、フロントが波に潜りそうだなっていう心配が一切ないマシンなので、だからこそ自分が頑張るだけっていうところもあって。気持ちよく走っていられるマシンですね。
HWSM 今は最新モデルのPro Force 3.0に乗られていますね。従来モデルからどこが進化したのでしょうか?
小原 繰り返しになっちゃいますけど、さらに安定性が高まりました。いいマシンってスピードが速くてもそれを感じさせないんですけど、3.0がまさにそれ。高速で旋回しても安定感があるから負荷も少ないですし、ラクができて疲れにくいマシンです。
基本的に載せるエンジンは2.0と同じなんですけど、3.0は専用パーツが少なくなっていて、カワサキのSX-Rから簡単に移行できるようになったのも特徴です。
2つの世界大会で好成績も
Top of Topには届かず
HWSM そんなマシンとともに、2023年は世界大会にも積極的に参戦されました。まずは10月にアメリカで開催された『PRO WATERCROSS INTERNATIONAL CUP(インターナショナルカップ)』ですね。
この大会と同時期に『IJSBAWORLD FINALS(ワールドファイナル)』も開催されていて、小原選手は後者の大会に毎年のように参戦されていました。思い入れもあったと思いますが、インターナショナルカップを選んだ理由は?
小原 インターナショナルカップはPro Watercraftが協賛していて、クリスに「来てほしい」と言われたのが一番の理由ですね。本当はワールドファイナルにも出られたら良かったんですけど、仕事の都合もあって何週間もアメリカにいるわけにはいかなかったので、インターナショナルカップに専念しました。
HWSM 見事Pro Ski GPクラスで優勝して世界チャンピオンになりましたが、意外にも世界的なレースのトップカテゴリーで優勝するのはこれがはじめてでしたね。
小原 そうですね。ようやく(世界チャンピオンを)取れたという安心感と、これまでやってきたことが間違っていなかったというのを実感できました。
HWSM 小原選手は29歳ですが、レース歴はすでに17年。ベテランの域になるわけですね。
小原 意外とここまでくるのに苦労しました。そもそも勝てるマシンで戦えないときもありましたし、勝てるマシンが用意できて、世界を狙えると思ったらマシンが壊れたり、チャンピオンになるには何かが足りていなかったのかなって。今回はマシンも仕上がっていましたし、運の要素も重なってチャンピオンを取れた感じですね。
HWSM そして12月にはタイで開催された『WGP#1 WATER JET WORLD CUP(ワールドカップ)』に参戦。こちらは世界のトップラダーが勢揃いする大会ですね。
小原 ワールドシリーズの最終戦という位置づけでもあるので、真の世界一を決める大会という感じです。世界中から濃いメンバーが集まっていて、振り返ってみると世界のレベルは高いなと改めて実感したレースでした。
マシンも自分自身もできる限りの準備をして臨んだんですけど、インコースのホールショットには一度も届きませんでしたから。全レースで狙っていたんですけど、そこにはまだ足りていなかったというか。
結果は総合2位でしたけど、前を走っていたライダーとの差はあまりにも大きかった。逆に次の目標が明確になりましたね。
HWSM 世界トップクラスのライダーと十分戦えているように見えましたが、小原選手のなかではまだ届いていなかったと。
小原 インターナショナルカップでは運も味方してくれて優勝できましたけど、ワールドカップはたとえ運が良くてもそれだけでは勝てないぐらい実力差がハッキリする大会なので、もっとトレーニングを積んで体力を向上しないといけない。マシンのレベルもさらに一段階アップする必要があります。
チーム全員で頑張った結果の2位なので現時点ではベストの結果ですけど、優勝にはまだまだ足りていなかったということです。
HWSM 結果として世界大会で1位と2位という好成績を収めました。ボートレーサーとして経験を積まれた今だからこそ、この結果が得られたようにも見えましたが、ボートレースの経験が水上バイクのレースに活きている部分はあるのでしょうか?
小原 それに関しては自分のなかでも感じるところがあって、マシンの操作に大きく影響していると思っています。ボートレースのボートは基本的に曲がらないように作られているので、それをいかにして曲げて、どれだけ速く走るかを突き詰めていく競技なんです。その経験を踏まえると、水上バイクはハンドルを切れば素直に曲がってくれますからどれだけ乗りやすいか。
あとはボートレースでどういったライン取りをすればラップタイムが上がるか勉強したので、それが水上バイクのレースにも活きているのだと思います。「ボートレーサーになってからさらに上手くなったね」と言ってくださる方も多いんです。
- 1
- 2