親子で同じ趣味を持つことに、憧れを抱くひとは少なくありません。
コミュニケーションのきっかけになったり、子どもが大きくなっても一緒の時間を過ごせたり、趣味が潤滑油となって関係が上手くいくこともきっとあるでしょう。
近年は水上バイクでも、子どもが免許を取得して親と一緒に楽しむケースが増えています。
ここでは水上バイクが繋ぐ様々な親子の物語を、少しだけ紐解いていきましょう。
水上バイクレースで繋がる
大畑一家の物語
HWSM 雄一さんが水上バイクにはじめて乗ったのはいつごろですか?
雄一(父) 23歳か24歳のころだったので、今からちょうど30年ぐらい前ですね。このあたり(湘南界隈)の海とか川で気持ちよさそうに乗っているのを見かけて、自分でも乗ってみたいと思ってすぐに免許を取りに行きました。
HWSM 最初に乗った水上バイクは?
雄一(父) カワサキの750 SXでした。免許を取ったらすぐにボロボロの中古を買って、最初は海で乗りましたね。その当時はけっこう賑わっていて、乗っているひとも多かったです。
HWSM 最初の印象はいかがでしたか?
雄一(父) 1人乗りの立ち乗りモデルでぜんぜん立てなかったんですけど、簡単には乗れない難しさにハマりました。あのときすんなり乗れていたら、きっとここまでハマっていなかったと思います。それからは毎週日曜日の練習が楽しみでしたね。
HWSM 麻美さんはいつごろから水上バイクに乗るようになりましたか?
麻美(母) 結婚してからですね。主人と一緒にマリーナに来ても、免許がないから見てるだけでつまらなくて。せっかくなら自分も乗りたいと思って取りに行きました。昔はジェット免許(特殊小型船舶操縦士免許)がなかったので、4級の船舶免許を取らなきゃいけなかったから大変でしたね(笑)。
HWSM 水上バイクに乗る前からその存在は知っていましたか?
麻美(母) 知っていましたけど、まさか自分が乗るとは(笑)。
HWSM ご自身で乗ってみていかがでしたか?
麻美(母) ……意外と簡単だなって(笑)。
梨菜(子) パパが難しかったって言ってるのに(笑)。
麻美(母) 自分が乗る前にずっと見てたから、どうやって乗ればいいかなんとなく頭では理解してたんですよね。それに今より細かったからバランスも取りやすくて(笑)。
HWSM それからずっと乗り続けているのでしょうか?
麻美(母) 娘を妊娠してから小学校6年生ぐらいまではお休みしていました。目が離せなかったので。それで大きくなって手離れしてきたから、もう一度乗ろうかなって。運動のために(笑)。
HWSM その当時はどこで乗っていたのでしょう?
雄一(父) 今と変わらず馬入(相模川の河口付近)ですね。当時のマリーナが無くなってしまったのでひとつ下流側にあった今のマリーナに引っ越しましたけど、乗っている川自体は変わらないです。そこで今の仲間たちとも出会って、30年ぐらいずっと毎週日曜日に乗っています。
HWSM 乗り始めてからずっと週1回の練習を続けている?
雄一(父) そうですね。うちの家族はそれがルーティンになっています。水上バイクに乗りたいのはもちろんですけど、仲間がいるから来ているのもあります。
HWSM 梨菜さんは小さいころマリーナに来ていた記憶はありますか?
梨菜(子) けっこう覚えてますね。パパが練習しているのをママと一緒に見ていたこととか。
HWSM 水上バイクに乗っているお父さんはカッコ良く見えていましたか?
梨菜(子) 普通ならカッコいいと思うかもしれないですけど、それがアタリマエだったので……(笑)。普通のお父さんにくらべたら凄いことをやっているとは思いますけど。
雄一(父) 産まれてすぐにマリーナに連れて来ていましたし、水上バイクが身近にある環境で育ったので。エンジン音を聞かせても泣かなかったし。
梨菜(子) 逆に寝心地がいいんです。レース会場のニオイと音が。
HWSM 産まれたときから毎週日曜日は欠かさず水上バイクに乗りに来ていますが、それがイヤになったりはしませんか?
梨菜(子) それはなかったですね。凪(大中原凪さん。幼少期からマリーナでともに過ごした梨菜さんの親友)みたいに小さい頃から一緒にいる友だちもいるし、夏はランナにも乗せてもらえたし。
凪さんのインタビュー記事はこちら
【インタビュー】ケンカをしても「ジェットの日」でリセット|PWC(水上バイク)×FAMILY|大中原育美・凪
HWSM 3人乗りのランナバウトを誰かが下ろしてくれて?
麻美(母) 橋本さん(橋本祐一さん:元JJSBAチャンピオン)。あの人のうしろに乗ってスピードに慣れさせられたんだよね(笑)。
梨菜(子) あれに乗ったらもうなんでもいける(笑)。
麻美(母) それを小さいころからやってるから、スピードに対する恐怖心があまりないんですよ。
梨菜(子) 自分で乗るようになった今となっては、ありがたいですけどね。
HWSM 免許はいつごろ?
梨菜(子) 16歳になってすぐに取りました。
麻美(母) それも周りのみんなから「いつ取るの?」ってずっと言われ続けてて。
梨菜(子) 免許を取らないって選択肢はなかったです(笑)。
HWSM 免許を取る前から自分で操船してみたいと思っていましたか?
梨菜(子) そうですね、ずっと思ってました。
HWSM ご両親は、梨菜さんといつか一緒に乗りたいと思っていましたか?
雄一(父) 日曜日は水上バイクに乗るのが我が家の日常なので、自然と一緒に乗ることになるだろうと思っていました。キライなら来ないだろうし、強制しているわけではないので、今のところは本人も楽しんでいるんだと思っています。
HWSM 梨菜さんが最初に乗った水上バイクは?
梨菜(子) 免許を取って最初に乗ったのは550ですね。芳賀さん(芳賀毅さん:元JJSBAチャンピオン)にマンツーマンで乗り方を教えてもらいました。
雄一(父) 娘の師匠は橋本さんと芳賀さんです。
HWSM チャンピオンのふたりから教えてもらえるなんて、恵まれた環境ですね。はじめて水上バイクに自分で乗ったときの感想は?
梨菜(子) 楽しかったというよりも、やっと乗れた~っていう気持ちの方が大きかったです(笑)。見てるだけの時間がすごく長かったので、かなり待たされた気分で。
HWSM そして今では家族全員がレースに出られていますが、雄一さんはいつから?
雄一(父) 2002年からですね。最初は750 SXi Proで出たんですけど、走り出す前からドキドキで。よくわからないままあっという間に終わってしまいました。それから800 X-2に乗り換えたんですけど、これがすごい楽しくて。すっかりハマってしまって、それからはずっとX-2に乗っています。
HWSM 水上バイクレースの魅力は?
雄一(父) 元々競争するのが好きで、身近に橋本さんとか芳賀さんみたいな速いひとがいたから、いつか抜きたいと思っていたんですよ。その競争心みたいなものも、日常ではなかなか味わえないものですよね。だからレースに出ているときは練習して、仕事して、また練習の繰り返しだったんですけど、1年がすごく早くて。充実した楽しい日々でした。
HWSM 麻美さんもOUT A TIME SPORTS(ヴィンテージ水上バイクのタイムアタック)に出場されていましたが、それ以外にレースの経験は?
麻美(母) ないです。あれだけです。
HWSM なぜ出場しようと?
麻美(母) 芳賀さんが「登録しといたから出な~」って(笑)。すでにエントリー済みでお金だけ持ってくればいいみたいな(笑)。
HWSM はじめてレースに出た感想は?
麻美(母) 一緒に練習してるみんなもいたから楽しかったですよ。誰も見てないだろうと気楽に走ってましたけど(笑)。
HWSM 梨菜さんもOUT A TIME SPORTSでレースデビューでしたね。
梨菜(子) そうですね。ホントに緊張しました。ママみたいな(気楽な)マインドで乗れたら良いんでしょうけど、逆にみんなに見られてると思っちゃって。何回か出てますけど、楽しむとか勝つとかそんなことを考える余裕は全然なかったですね。だから大勢で一緒に走るクローズドレースの方がいいかもしれないです。紛れ込めるから(笑)。
HWSM 家族での水上バイクの思い出は何かありますか?
麻美(母) 一番印象に残っているのはこの子(梨菜さん)がはじめて乗ったときですかね。意外と乗れていたので。
梨菜(子) それが家族の思い出?(笑)。
麻美(母) あまりにも水上バイクに乗ることが日常過ぎて、特別な思い出がないのかも(笑)。
HWSM 冬でも関係なく練習しているのでしょうか?
雄一(父) 季節関係なく乗りにきています。冬の方がゲレンデが空いてますし。
HWSM 梨菜さんは寒さは問題ありませんか?
梨菜(子) イヤですよ(笑)。セミドライを着てなんとか。でも凪もいるし、一緒に練習する相手がいるから頑張ってます。
HWSM 以前は凪さんも梨菜さんも冬はそれほど乗らず、一緒にマリーナで踊ったりしていたと聞きましたが。
麻美(母) ダンスにハマってレッスンに通っていたこともあったので、そのときのことかな。
梨菜(子) あ~、そんなときもあったかも(笑)。
雄一(父) 凪はJJSA(全日本選手権シリーズ)に出るって決めてから一生懸命、練習するようになりましたね。
HWSM 梨菜さんもJJSAのレースに?
梨菜(子) 登録だけしてあったんですけど、まだ出ていなくて。第4戦の千里浜大会から出てみようかなと思っています。
雄一(父) それで新しい550も買ったんですよ。
HWSM 今シーズンは最初から出場する予定があった?
梨菜(子) なかったんですよ。この550も大学の入学祝いだと思ってました(笑)。ただせっかく買ってもらったし、凪も出てるし、出てみようかなって。
麻美(母) 周りのみんなから「出ないの?」って言われているうちに気持ちが変わっていったみたいで。レース会場でも色々なひとが顔を覚えてくれて、声をかけてくれたりするので。家族よりも周りから言われた方が響くみたい(笑)。
HWSM 梨菜さんのクローズドレースデビューも応援してくれそうですね。
梨菜(子) 出るのを昨日決めたばっかりで、(取材日は6月中旬)、まだスタートの練習もしてないし、どうしよう。
雄一(父) 勝ち負けばっかりじゃなくて、楽しんでくれたらいいですけどね。
麻美(母) でも難しいですよね。主人は自分がレースに出ていたから、あそこはああすれば良かった、ここはこうした方が良かったってなりそう。まあ無事に帰ってきてよ(笑)。
梨菜(子) 頑張ります。
HWSM 麻美さんはお子さんがレースに出ることに対して不安ではありませんか?
麻美(母) 心配ではありますけど、550ですからね。出てるメンバーもだいたい知ってるひとで、無茶なこともしてこないだろうから、まあ大丈夫かなと。
HWSM では梨菜さんがレースに出ると決めたときも、反対することもなく。
雄一(父) うちは反対とかそういうのはないですね。
麻美(母) 前から「出たらいいのにね」って話していたぐらいです。ただ本人にその気がなかったから、しばらく放置していたんですけど。
HWSM 4戦目でようやく出場となりそうですが、ずっと迷っていたのでしょうか?
梨菜(子) 早めに登録したのは、橋本祐一さんがつけていたゼッケン50がほしくて……(笑)。誰かに取られる前に確保したんですけど、その時はまだレースに出る気もそこまでなくて。そのまま1年終わりそうな勢いだったんですけど、みんなにも言われたし、もったいないから出ようと思って。
HWSM 師匠のゼッケンを受け継げてよかったですね。
雄一(父) 橋本さんもそうですし、芳賀さんや他のみんなも上手なひとが多いので、色々なことを教えてくれるのはありがたいです。
麻美(母) みんなかなりのベテランだから、若いひとに教えたいんだよね、きっと(笑)。
梨菜(子) おかげで毎週楽しく乗れてます。
麻美(母) 職種も立場もまったく違う色々な大人たちと会話ができる場なので、社会性が身につくとも思うんですよね。私が子育てしているときもここに来たら誰かが手伝ってくれたり、色々なことを教えてくれたり、家族には言いにくいことも話せたり、ここでは水上バイク以外の部分で助かることもたくさんあって。家族や学校だけで生活しているよりも多くのことが学べるかなと。良いことも、悪いこともね(笑)。
HWSM 水上バイクの魅力は?
雄一(父) 水上を走る爽快感が、ストレス発散になります。道のないだだっ広い場所を自由に走れるなんて、陸上にはありませんから。
HWSM 麻美さんと梨菜さんはヴィンテージ水上バイクに乗られていますが、魅力はどこに?
梨菜(子) 新しいマシンは速くて大きいから怖さがあるけど、550は小さいしパワーもそこそこなので、まだ操れる範囲かなと。最近はうまく乗れなくて楽しさが見いだせないんですけど……。
麻美(母) 小さいから乗りこなすのは難しいですけど、それも楽しさのひとつですよね。転ばずに上手く乗れたときの達成感は、イマドキのマシンよりも550の方が感じやすい気がします。転びまくってそこら中を痛めながら帰ることもよくあるんですけど(笑)。
HWSM 親子で同じ趣味を持つことで、日常生活への影響はありますか?
麻美(母) 大人になってくると自分のやりたいことが増えたり、彼氏ができたり、バイトをしたり、家にいないことが増えてくるじゃないですか。でも日曜日は水上バイクに乗る日だから、前日からその会話があって、当日は家族が集まる。もし行けなくても、ただ「行けない」で終わるんじゃなくて、その理由から別の話題に広がったり。会話のきっかけにもなりますよね。ケンカをしても乗りには行くだろうから、そこで仲直りもできるだろうし。
HWSM 梨菜さんは「親と一緒にいるのなんてイヤだ」という時期はありましたか?
梨菜(子) それはなかったですけど、もしそうなったら、ここに来られなくなっちゃうだろうなって。それが理由で仲良くしてるわけではないんですけど(笑)。凪もいるし、みんなもいるし、会いたいひとたちがいる環境を与えてくれたのはありがたいですね。
HWSM 今後も家族3人で水上バイクに乗りに行く生活が続けられそうですね。
麻美(母) 彼氏ができなかったらずっとだよ……(笑)。
雄一(父) 一度連れてきたことがあったけど。
梨菜(子) 日曜日の練習を欠席するんじゃなくて、彼氏をここに連れてきてました。
麻美(母) 仲間のみんなに審査してもらって(笑)。親より厳しいですよ。「梨菜には合わないんじゃないか」みたいな(笑)。
梨菜(子) お父さんお母さんがいっぱいいるみたいな(笑)。
麻美(母) 気に掛けてくれるひとがたくさんいるのはありがたいですよね。これからも家族3人だけじゃなくて、みんなで仲良く楽しく水上バイクに乗れたらいいなと思います。
親子のホンネトーク
ここからは親子別々にインタビュー!
直接言いづらいことや親子ならでは悩みなどをホンネで語ってもらい、お互いへのメッセージをボードに書いてもらいました。
親から子へ
HWSM 梨菜さんが水上バイクに乗るようになって、親子の関係に変化はありましたか?
麻美(母) 小さいころから乗る場所にはずっと一緒に来ているので、特に変わったことはありませんね。
HWSM 乗り方について聞かれることは?
麻美(母) それは不思議と私たちには聞いてこないんですよね(笑)。
雄一(父) 俺が言うとケンカになっちゃうんですよ。だからあえて言わないようにしています。周りの先輩方が教えてくれるので。
麻美(母) 周りのみんなは丁寧に教えてくれますから(笑)。家族だから言葉が足りなかったり、強い言い方をしてしまうこともあって、本人も受け入れづらいみたいで。
HWSM 仲間のみなさんに感謝ですね。
麻美(母) 乗り方を教えてもらうのもそうですし、大人たちと接することでさっきも言いましたけど社会性が身につくと思うんです。それがアルバイトするときでも、大学の教授と話すときでも自然と活きてくるんじゃないかなと。
HWSM 仲間のみなさんも家族みたいだと梨菜さんは言っていましたが。
麻美(母) うちは一人っ子だけど凪とは姉妹みたいだし、たくさんの父親と母親に色々なことを教えてもらっていると思います。グレなかったのもみんなのおかげかな(笑)。
HWSM 間もなく梨菜さんもクローズドレースにも挑戦されますが、先輩レーサーとして何かアドバイスはありますか?
雄一(父) まずは走りきったあとの達成感を味わってほしいですね。あとは勝ちたいとか、悔しいとか、レースに出たからこそ得られるものがあるので、それを感じてほしいです。その先にもっと上手く乗れるようになりたいとか、マシンを速くしたいとか、そういう気持ちが出てきたらそのときはできるだけのサポートはしていこうと思います。
子から親へ
HWSM 水上バイクに乗っているときと普段のご両親で違いはありますか?
梨菜(子) 水上バイクに乗りに来ているときはすごいリラックスしてますね。この日のために仕事も頑張ってるんだろうなって思います。
HWSM 梨菜さんも家族で水上バイクに乗る時間は大切ですか?
梨菜(子) 3人が集まるのって、ここ以外だとリナのバイトがない日の晩ご飯ぐらいなんですよ。だから1日一緒の場所にいるのは水上バイクに乗るときだけで。実際には乗りに来てもずっと一緒にいるわけではないですけど、それでも毎週日曜日は家族の大切な時間です。
HWSM ご両親と一緒に水上バイクに乗っていて、ヤメてほしいことはありますか?
梨菜(子) 一緒に乗るみなさんにはお世話になってますから、レース会場でも練習のときでもお手伝いで動き回るのはアタリマエで、何をするのかわからないこともあるから教えてもらうのは当然なんですけど……。まあ言われるのはしょうがないか、動けばいいかって思ってる部分もあったり……(笑)。そんなにガーっと言われるわけじゃないんですけど、ちょっとイヤなときもあるかな~って(笑)。
HWSM 家族から言われる方が受け入れづらい?
梨菜(子) 乗り方にしても、周りのひとは水上バイクの仕組みから丁寧に説明してくれるのでわかりやすかったりするんですけど、「なんでそうなるか」を教えてくれないことがあるので。
HWSM いつまでもご両親と一緒に水上バイクに乗りたいですか?
梨菜(子) それは思います。同い年の子のお父さんとかを見ると、うちのパパの方が明らかに若く見えるんですよ。水上バイクに乗って体を動かしてるからだと思うので、いつまでも続けてほしいです。リナも働くようになったら自分で水上バイクを買って、毎週日曜日の水上バイクの日は続けていけたらいいなって思ってます。
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