【水上バイクレース】14歳の少年が見据える未来――|佐藤進之助 2年目の海外挑戦を終えて

photo/Jin Omura

日本での免許取得を待たず、父とともに海外レースに挑戦する14歳の佐藤進之助。

3年計画を掲げるふたりにとって折り返しとなる2年目のシーズンの振り返りと、ラストイヤーに向けての意気込みを語ってもらいました。

父・保宏さんとともに世界チャンピオンを目指す進之助くん

――2年目のシーズンは1年目より出場レースも増えて、4ストのSJもデビューしました。乗り慣れてきましたか?

進之助 まだそんなにたくさん乗っているわけではないですけど、パワーにも慣れてきて自分で操れるようになってきました。

――成長期で体も大きくなってきているようですね。

進之助 筋肉もだいぶついてきたので、マシンに振り回されることがなくなってきました。

――体の成長に伴う変化は保宏さんも感じますか?

保宏 国内でも海外でも「大きくなった」と言われることが多いですし、この1年で身長は10cmぐらい伸びてますから、そこはやはり成長期なのかなと。パワーも筋肉というより体幹が鍛えられてきて、その効果が出ていますね。春から続けている体幹トレーニングの成果に体の成長が合わさって、それがライディングにも反映されていると思います。経験が浅い4ストクラスでも結果が出せたのは、身体的なパフォーマンスの向上があったからでしょうね。

――2024年9月には世界大会の前哨戦として米国のシリーズ戦に参戦しましたが、2年目の目標である5位以内を達成できそうな手応えは感じましたか?

保宏 マシンの方は問題なかったかなと。メンタルの方は9月のレースで課題が見つかったんですけど、とにかく最初が硬いんです。それをわかったうえで10月のワールドファイナルにも挑んだんですけど、その課題が克服できなくて。どのクラスでもMOTO 1とかMOTO 2は実力がすべて発揮できなくて、最後の方になると調子が良くなってくるので。そこがイマイチ成績が伸びなかった要因ですね。

――原因は緊張ですか?

進之助 それもありますし、前に出なきゃいけないとか、勝たなきゃいけないとか、色々な気持ちが合わさってグチャグチャになってます。あとは前に人がいると落ち着いて走れるので追い上げは得意なんですけど、自分が前に出ると先頭を走ってるプレッシャーでミスをしたり。

――メンタルが走りに直結するタイプなのですね。

保宏 そこが9月の時点での明確な課題で、段階的にマシにはなっていたんですけど、10月は最終目標のワールドファイナルということもあって本人の肩に重圧がのしかかっていたのかなと。それをふたりでコントロールするのが3年目に向けての明確な課題になっています。

――結果はどのクラスも目標の5位に近い順位で終えられましたが、それ以上を狙うためにはマシンやスキルよりもメンタルコントロールが必須だと。

保宏 ライディングはトップ3とくらべても遜色ないですし、調子が出てきたらラップタイムはこっちが上回っていたりするので、技術的にはトップレベルだと思うんです。ただトップ3の子たちは落ち着いているので、そこの差を3年目に向けて埋めていく必要があります。順位としては目標をほぼ達成できましたけど、ここからが正念場です。

――2年目を終えてもっとも成長できたと思う部分は?

進之助 スタートで接触したとき、1年目は恐怖心もあってスロットルをゆるめてしまうことがあったんですけど、今シーズンはぶつかっても怯まずにそのままホールショットを取ったり、コーナーを曲がっていったり、そういう恐怖心は克服できたと思います。

――保宏さんから見てどこが成長したと思いますか?

保宏 ライディングのスキルは段違いに伸びているのを実感しますね。これからの伸びしろも見えているので、まだまだ成長していきそうで楽しみではあります。やっぱり海外のメンバーと一緒に走ることでとんでもなく成長するので、行けば行くほど伸びていくというのはあるんですけど、どうしても行ける機会は限られてしまうので。そこが歯がゆいところではあります。

――伸びしろとは?

保宏 課題となるのは先ほども言ったようにメンタルの部分で、そこを徹底的に鍛えていくのが最優先。あとは僕たちふたりの役割分担は明確なので、息子にはレーサーとして自分のやるべきことを自分でやってほしいですし、自分のことは自分で管理できるようになってほしいですね。ホントはまだ早いのかもしれないですけど、親子ではなく大人同士のコンビになっているのかなと思うんです。負担は大きいかもしれませんけど、頑張って成長してほしいですね。

――進之助くんは自分に何が足りないと思いますか?

進之助 MOTO 1とかMOTO2で自分の実力を発揮できなかったりとか、体調管理ができていなかったりとか、あとはレース中のミスもまだまだ多いので、冷静に走ることですね。

――メンタルが課題というのがおふたりから何度か出てきましたが、解決策はありますか?

進之助 MOTO 1の前はいつも音楽を聴きながら自分を落ち着かせようとしてるんですけど、それがあまり効果ないみたいで。9月のシリーズ戦のときはレース前から海外の友だちと喋ったりしていて、そっちの方がリラックスして走れたので、次からはそうしようかなと思います。

――保宏さんはメンタル問題を解決する策はありますか?

保宏 ひとつ明確にわかっていることがあって、周りのライダーを気にしすぎなんですよね。「ライバルが速い、ライバルはこう走る」みたいなことばかりが頭にあって、「そうじゃない、自分がどう走るかだ」と正してるんですけど、どうしても周りのことばかり考えてしまうみたいで。それがMOTO 1とかMOTO 2を走り終えると冷静になって、自分の走りに集中できるようになってからは実力が発揮できるので。「他を気にしない、まずは自分」というように促していけたらなと思います。

――ちなみに9月と10月で連戦になりましたが、学業は大丈夫ですか?

進之助 ……まあ、えっと……。

保宏 大丈夫ではないですね。

進之助 ついに塾にも通い始めましたし、春までレースはないので、ここからしばらく学業に専念……、したくはないですけど頑張ります(笑)。

――次はいよいよ3年目で、3年計画を掲げるおふたりにとってラストイヤーとなります。

保宏 最初は今シーズンと変わらず5月のハンティントンビーチでのレースを予定しています。その後は出場するレースの数を2年目より増やしたいと思っているんですけど、息子の学業とか僕の仕事とか、色々な兼ね合いがあるので思案中です。

――3年目の目標は?

保宏 レースに向けての体調面の調整とか、すべてのことを2年目より仕上げていって、より精度の高い状態で戦いたいですね。この2年間で色々なトラブルも経験してきたので、あらゆることを想定内にしたうえで世界チャンピオンを目指していきたいです。

――進之助くんは?

進之助 この2年間で吸収してきたことをすべて出し切って、世界チャンピオンを目指して頑張ります。

Shinnosuke “Sugar” Sato
2024 Race Results

■1st Race

【2024 Best of the West Round 5】
5月4日~5日 @米国カリフォルニア州ハンティントンビーチ

JUNIOR 13-15 SKI LITES|1位

■2nd Race

【WGP#1 ASIAN CHAMPIONSHIP 2024】
6月6日~9日 @大阪府貝塚市二色の浜海浜公園

JUINIOR 13-15 SKI 4 STROKE LITES|2位

■3rd Race

【2024 Best of the West Round 12 & 13】
9月14日~15日@米国アリゾナ州レイクハバス

・Round 12
PRO AM 4STROKE LITES|4位
JUNIOR 13-15 SKI LITES|4位
NOVICE SKI LITES|1位

・Round 13
PRO AM 4STROKE LITES|6位
JUNIOR 13-15 SKI LITES|4位
NOVICE SKI LITES|2位

■Final Race

【2024 IJSBA WORLD FINALS】
10月7日~13日@米国アリゾナ州レイクハバス

AMATEUR 4STROKE SKI LITES|6位
JUNIOR 13-15 4STROKE SKI LITES|5位
JUNIOR 13-15 2STROKE SKI LITES|7位

フォース
https://tw1.jp/

水上バイクやボート、各種マリンスポーツの新鮮情報をお届けする、ホットウォーター公式LINE。雑誌企画『みんなのPWCライフ』への写真投稿もできます。
LINE友だち追加はこちら
いいね! お願いします