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開発担当者が語る、新型SJへの想い
2021年にフルモデルチェンジを果たし、ヤマハ初の4スト・スタンドアップとして我々の前に帰ってきたSuperJet。
インプレッション記事でその「SJらしさ」は体感済みだが、「なぜ」「何が」「どうやって」という疑問は尽きない。
新型SJに込められた想いと、その意味や意図を開発担当者に語ってもらった。
インタビューに答えてくれたのは
鈴木 勝さん Masaru Suzuki
ヤマハ発動機
マリン事業本部 開発統括部
WV開発部 製品開発グループ
新型SJに込めた3つのこだわり
3人乗りモデルが圧倒的な人気を誇る現在の市場において、なぜ新型SJのリリースに踏み切ったのでしょうか?
ヤマハからSuperJetというモデルを消したくない、という気持ちが強かったのが理由のひとつです。ヤマハの水上バイクのラインアップで唯一、乗りこなす楽しさや操る楽しさを味わえるモデルだから、無くすわけにはいかないと思いました。
研究のためのプロトタイプ開発は長期に渡って実施していましたが、生産化のための開発は2年半ぐらいです。
開発するうえで、もっともこだわった部分を教えてください。
3つほどあるのですが、まずはハル性能です。これまでのSuperJetの軽快性や旋回性能を、4ストモデルでも継承することが新しいSJにも必要だと考えていました。
それを実現するために、要所となったのはどの部分でしょう?
ボディの小型・軽量化ですね。それを達成するために各部のレイアウトを最適化して、軽快な旋回を実現するためにハル形状を一新しました。
フロントワイドの形状にすることで、直進安定性と旋回性能を両立しています。またラウンドキールを採用することで、チョッピーな海面での安定性と衝撃の緩和を実現しています。
検討しませんでした。スポンソンがいらないハルを作ればいいだけですから。レースをターゲットに開発するなら検討したかもしれませんが、幅広いユーザーに乗ってもらうモデルとして開発してきたので。
サイズの最適化です。冒頭でもお話ししたとおり、SuperJetというモデルネームを継続させるのが最重要課題でしたから、お客さまのイメージからかけ離れたモノを作るわけにはいきませんでした。
小型で軽く、扱いやすいのがSJだと私たちは考えています。それはつまり「SJらしい軽快性や旋回性能を継承する」ということで、そのためにはサイズアップを最小限に抑える必要がありました。
デザインですね。SJらしい走りは踏襲しつつ、まったく新しいビジュアルを提供することにもこだわりました。
1.8Lエンジンの搭載は考えていなかった?
EX DeluxeのTR-1エンジンをコンパクトな艇体に搭載するレイアウトや、目標とする性能や基準をクリアすることに苦心しました。
なぜTR-1だったのでしょうか? TR-1 HO(110馬力)でも良かったのでは、と素人考えで思ってしまうのですが。
単純なスペックではなく、お客さまの視点から全体のバランスを考えた結果、TR-1エンジンを採用しました。
吸気ボックスを小型化しました。あとは電装品と排気系のレイアウトを最適化しています。
1.8LのHOエンジン(170馬力)を搭載するプランは検討されましたか?
開発途中、ほんの一瞬だけ頭をよぎりましたが、すぐに必要ないと考えを改めました。
「SJらしさ」という意味ではハイパワー化よりも小型・軽量化の方が重要で、それが実現できれば市場(レース以外の部分)でも商品として十分戦えると確信していたからです。
その小型・軽量化を実現するために、エンジンハッチの開発にはかなり苦労されたそうですね。
4ストのTR-1エンジンを搭載して、そのうえで整備性を確保するためには、従来よりもエンジンルームの開口部を広げる必要がありました。一方で、全体の軽量化を考えるとハッチはできるだけ軽くしたかった。
大型化と軽量化とは、相反することのように思いますが。
その難題をクリアするために、ハッチの内側をSMCからインジェクション成型の樹脂部品に変更しました。これで大幅な軽量化となっているのですが、そのうえでラフ航走でもハッチが変形しないように、部品構成や取り付け構造を工夫してあります。
ヤマハの技術の粋が詰まっている、というわけですね。
ビギナーも楽しみやすいスタンドアップ
スタンドアップにはじめてL-モードが採用されました。
機能の概要は従来同様で、エンジンの最大出力が80%に制限されて、さらに加速特性も穏やかになります。
はじめてスタンドアップに乗るひとは、立ち上がるところで苦労しますよね。それと同じぐらい、スロットルコントロールにも苦戦するので、L-モードがその手助けになると思い採用しました。
うちのSJはココに注目
ご自身にも改めて試乗してもらいましたが、納得のいく仕あがりになっていますか?
予想以上にハルとエンジンがマッチしたので、結果として「SJ感」はだせていると思います。自分としては納得しているので、あとは市場でお客さまがどう評価してくれるかですね。
やっぱり旋回性能のところかな、と思います。曲がるのが楽しいモデルになっているので。
乗る楽しさ、操る楽しさを体感してほしいですね。水上バイクの本来の遊び方というか、楽しみ方をこの新しいSJで感じてもらえたらうれしいです。
スキルがあがっていくにつれてライダーとボートの一体感が高まり、自分の手足のように操れるようになる。この満足感は、他では味わえないと思います。はじめて(スタンドアップに)乗るお客さまにもぜひチャレンジしてもらって、その魅力を体感してほしいですね。
ヤマハ発動機