生駒 淳の海外レース参戦記#07│JSAP NATIONAL TOURS 2019

2019年8月11日(日)【レース2日目】
忖度レースは難しい……。後味の悪い終わり方に

朝7時にレース会場へ行き、前日同様、まずは朝ご飯を頼んでから、レースの準備をはじめました。フィリピンのレースで自分がもっともストレスを感じるのが、各クラスのスケジュールがわからないこと。あらかじめ決まっているのが普通だと思うのですが、フィリピンでは「レース前にアナウンスするから」といって、スケジュールは発表されません。前にも書いたと思いますが、自分はバタバタするのが大キライ。「はい!! 次はあなたのレースですよ」と言われて大慌てで準備するなんて、その最たるものですよね。本当にストレス……。

もちろん今回も、スケジュールは発表されていません。それだけでなく、レース当日の朝に「マスタークラス出たいひと~」とアナウンスが流れ、急遽エントリーを集めてるぐらいだから、レースはまだまだ先だなと思っていたらその直後に、「マスター・ランナバウト・オープンのレースをはじめるよ~」とアナウンス。なんじゃそりゃー!! って感じですが、怒っても仕方がないので、嫌々ながら大急ぎで準備します。

マスタークラスのエントリーは、最終的に8人。スターティンググリッドは先着順なので、自分は一番に並んでインのインをゲット。でも他のライダーが、なかなか集まってきません。結局、グリッドに並んだのは4人だけ。どうやら自分が最初に並んだので、どうせ勝てないと思い、半数は出るのをやめたみたいです(笑)。

そんな感じなので、レースは余裕のホールショット。そのあとはマシンをいたわりながら流して、無事に1位でゴールしました。

次は午前中の中盤あたりで「アマチュア・ランナバウト・リミテッドのMOTO 2を次にやるよ~」とアナウンスがあり、お、つぎ俺だ!! みたいな感じで、またまた急いで準備。嫌々ですけど、少しだけ慣れてきた気もします(笑)。

ちなみにタクロバンのときもそうでしたけど、このクラスはBJを勝たせる忖度レースです。自分に課せられたミッションは、BJを1位にして、なおかつ自分が2位になること。現在のシリーズトップはBJですが、2位のライダーとポイントが僅差なので、自分が間に入ってポイント差を広げたいとか。ちなみにシリーズ2位のライダーはタイのシリーズ戦にも出ていて、自分も仲が悪くはない。というか仲が良い方なので、少々やりづらい(笑)。でもフィリピンではこういう「誰かを勝たせる」ことは当たり前におこなわれており、これはタイも同じなので、あまり気にしないことに(笑)。

というわけで、人生2度目の忖度レースがスタート。グリッドは自分がインコースで、BJがアウトコース。シリーズ2位の選手は、自分と同じインコースです。

そしていざスタート!! と同時に、無理だーと思うほどBJとシリーズ2位の選手に置いていかれる……(笑)。前のふたりはブーストを上げたスーパーチャージャーで、自分はノーマルだから仕方ありません。

1ブイまで話にならないのは想定済みで、そこからがプロライダーの腕の見せどころ!! と思っていたのですが、ここは鏡のようにベッタベタの湖。全開で走るふたりに、まったく追いつけません。10周あれば体力勝負でなんとかできるのですが、今回はたった6周なので、それも無理。4周目ぐらいでようやくふたりのペースが落ちてきましたが、少し差が縮まる程度で、とても抜けるほどではありません。

通常こういう場合は、先頭のBJがペースを落として自分を追いつかせ、シリーズ2位の選手を抜かせるという作戦ですが、なぜかBJは気持ちよさそうにトップを爆走(汗)。そのままの順位でゴールしてしまいました。

レース後、追いつけなくてゴメンとBJに謝ったのですが、BJの方でも「2位のマシンが速くて、抜かれそうでペースを落とせなかった」そうです。このままでは、MOTO 3も自分が2位になるのは難しいので、あとで作戦会議をすることになりました。

テントに戻るとみんなが口を揃えて「マシントラブルがあったの?」と聞いてくるのですが、何のトラブルもありません。単純にマシンの性能差がそのまま出ただけ。自分のマシンはスーパーチャージャーがノーマルだからと説明すると、「昨日のスラロームはあんなに速かったし、前回のレースもぶっちぎりで速かったじゃん」と、まったく信じてくれません(笑)。

「前回は荒れた海面で、みんなが握れなかったから、自分が速く見えただけ」「昨日のスラロームは単純に腕の違いで、これだけベタベタの水面でマシンパワーに大きな差があって、しかも周回数が少なかったら勝てないよ」と説明しても、あまり納得はしていない様子。ひとまず2位になれなくてゴメンナサイ、と謝ることしかできず、少しだけ悲しい気持ちになりました。

午後のレースは、マスタークラスから。このクラスは、スロットルをほとんど握らなくても勝てる気がするぐらい、余裕のレース。実はエントリーするかも迷っていたのですが、本命レースは1位になってはいけないので、他でひとつぐらい勝ちたいなと思って、出場を決めました。そして予定どおり、マシンをいたわりながらも勝つことができました。

次は本命のアマチュア・ランナバウト・リミテッドのMOTO 3ですが、直前になって、レースをやる・やらないでモメはじめました。話を聞いてみると、シリーズ2位の選手のマシンが壊れたらしく、MOTO 3はヤメて、自分とBJがジャンケンで1位と2位を決めていいと。それならBJを1位にして一件落着と思ったのですが、しばらくするとシリーズ2位の選手が「やっぱり、レースをやらないなら全員ノーポイントだ!!」と言いだしました。もはや意味がわかりません(笑)。

自分のマシンが壊れて出られないから、レースを無くし、さらに全員ノーポイントだと主張しはじめたのです。BJもこれでは納得できないので、最終的にはレースをやることに。シリーズ2位の選手は、借りてきたSPARKでグリッドに並びました。周回数はたったの4周です。

自分がイン、BJがアウトからスタートし、自分がホールショットでした。おや? と思いましたが、選択コースはアウトの方が速いので、2周目で自分はインコースに行き、BJはアウトコースに。これで抜かれるハズですが、合流でBJが前にきません。あれ? もしかしてインコースの方が速いのかな? と思ってバックストレートをほどほどにゆっくり走り、BJが追いついたのを確認してから、今度は自分がアウトコースに。しかしまたもや合流でBJが前にこなかったので、仕方ないので、次の周で自分はイレイサーブイを回って、その間にBJに抜いてもらおうと思いました。

そして、ゴールブイの先にあるイレイザーブイを目指してホームストレートを走り抜けたその瞬間、なぜかチェッカーフラッグが振られました。頭のなかは大パニック!! 周回数は4周で、まだ3周目を終えたところなのにナゼ? あとになってわかったことですが、借り物のSPARKで走っていたシリーズ2位の選手が1周目で走るのをヤメたので、3周にしたそうです。なんじゃそりゃ!! 2周目に残り1周のホワイトフラッグが出ていたそうですが、自分は後方のBJばかり気にしていたので、まったく気づかず。まさかの1位でゴールしてしまいました……。

マシンに乗ったまま、水上でBJにゴメンと謝りました。BJは、どうやらマシントラブルだったようです。まさかのミッション失敗です。

そのままチームテントに戻ると、BJのスタッフたちは全員ア然としていて、誰も自分におめでとうとは言ってくれません。今まで感じたことのないアウェーの空気……。BJがみんなに、「KOMAは一生懸命ゆずってくれたけど、自分のマシンが壊れていて仕方なかった」と、事情を説明してくれました。言い訳をすればあと1周あったはずだし、3周だとわかっていればテザーを抜いてでもBJを前に行かせたのに……。そんなことを言っても仕方ないので、ひたすらみんなに謝るだけです。こんなにうれしくない1位ははじめて。そして、大好きで楽しみにしていた耐久レースは時間の都合で中止となり、今回のレースは結果的に2クラス優勝となってしまいました。優勝したのに「なってしまいました」なんて言うことになるとは……(泣)。

その後の表彰式は、各クラスの2位の選手がひとりも来ませんでした。フィリピンでは、なにやらいろいろあるみたいです(笑)。そして自分は8月末にフィリピンでもう1戦あるので、レース後もこのままフィリピンに残り、強化合宿をすることに。フィリピンは雨期で毎日雨が降っているのが心配ですが、頑張って練習しようと思います。

今回も応援いただきました読者のみなさま、スポンサーさま、ありがとうございました。次は気持ちよくレースが終われるようにがんばりたいと思います(笑)。

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#86 生駒 淳

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