生駒 淳の海外レース参戦記#09│2019 THAI AIRWAYS IJSBA WORLD FINALS

2019年10月13日(日)【レース7日目】
唯一残された世界チャンピオンへのトビラが、あり得ないかたちで閉ざされる。

PHOTO:Jin Omura

前日に急遽、朝イチに変更となった耐久レースですが、この日もスケジュールは大混乱。朝から変更に次ぐ変更で、いつはじまるのか、まったくわかりません。慌てないように準備だけはすませて、いつでもいけるように待機します。

全クラスのプラランが終わり、ようやくMOTO 1のスタートとなりました。耐久レースはコース外周を回り、30分+1周という競技内容です。

スターティンググリッド決めはピンポン玉での抽選で、自分が引いたのは9番目。耐久レースこそ、どこからスタートしても同じなんですけどね(笑)。

スタートはル・マン式で、ライダーはマシンのうしろに並び、合図とともに走ってマシンに飛び乗ります。スタート直後は5位ぐらいでしたが、1ブイを2位で回り、バックストレートでトップを抜き、ホームストレートを1位で通過。

この時点で、優勝できると確信しました。ただし、ずっと全開だと燃料が持たないので、トップになってからは後続との距離を保ちながら、ペースを落として走る作戦です。

ところがペースを落とした途端、マシンの調子が悪くなりました。全開に戻すと、調子が良くなります。

ガス欠でのリタイアが一番怖いので仕方なくペースを落としましたが、マシンの調子は悪くなる一方。とうとう2位のライダーに並ばれてしまいました。

仕方ないので、燃料に不安を抱えながらも、また全開で走ることに。しばらく全開走行を続けると、2位以下の全員を周回遅れにできたので、燃料さえ持てば、かなり余裕だなと思った矢先のことでした。

20分過ぎに突然、マシンが止まりました。

マジか!? ここまで来てまたかー!! と思いながらも、何度もエンジンをかけようと頑張り、マーシャルの牽引も断っていたら、なんとか1分後にエンジンがかかりました。

そこから全開で追いかけ、また全員をラップし直して1位でゴール!! だと自分では思ったのですが、ギャラリーの反応は、そんな感じじゃない。インスぺでみんなに確認すると、2位じゃないかと。

どうやら、自分がトップだと思って抜き返したカワサキはトップではなく、もう1台のカワサキが本当のトップだったようです。カワサキを抜いてからは、トップになったと思ってペースを落としていたのですが、その先に本当のトップがいたとは……。

でも2位なら、MOTO 2で1位になれば総合1位になれるので、まだまだ世界チャンピオン獲得のチャンスはあります。

リザルトを確認するとやっぱり自分は2位でしたが、1位のはずのジーン・ブルーノ・パストレロがなぜか5位で、1位はまったく知らない、ゼッケン3のUAEのライダーでした。あとで書きますが、「1位はゼッケン3のUAEのライダー」ということは、覚えておいてください。

パストレロが抗議に行ったので事情を聞いてみると、2回オンブイを取られ、2周減ペナルティで5位だと。本人も1回は認めているのですが、2回はやってないと言っていました。

それにしても1位のライダーが誰なのか、誰に聞いてもわかりません。見ていたひとはみんな、パストレロがペナルティなら、繰りあがりでKOMAが1位だと言ってくれたのですが……。

抗議するという方法もありましたが、パストレロがMOTO 1で5位なら、もはや自分の世界チャンピオン獲得に障害はありません。MOTO 2で1位になればいいだけだと、抗議はしませんでした。

耐久レースのMOTO 2はレーススケジュールの最後なので、世界チャンピオンになる気満々で、ものすごく長い待ち時間を過ごしました。

昼休みにはフリースタイルがあり、そのあともナニカのデモンストレーションがあり、7時間以上は待ったでしょうか。だいぶ夕暮れも迫る時間に、イヤなウワサを耳にしました。レースは日没までしかできないので、このままだと、耐久レースのMOTO 2が無くなるかもしれない、というもの。

えー!? もしMOTO 2が無くなれば、MOTO 1のリザルトで確定となり、UAEのライダーが世界チャンピオンになります。それは困る。そもそも、自分はMOTO 1でパストレロ以外を周回遅れにしたので、UAEのライダーに負けていたはずがない。でも、抗議はレース終了後30分以内にしなければならないので、もはや後の祭りです。

とにかくMOTO 2をやってもらわないと困るので、着替えてスターティンググリッドに向かいました。耐久のひとつ前のレースがスタートすると、その時点で日没ギリギリです。

耐久レースに出場するライダーの多くはMOTO 2は無いと思って私服に着替えていましたが、自分がスターティンググリッドで待っていると、他のライダーも大慌てで準備してやってきました。

そんな混乱のなかでも、インドネシアのアスファー兄弟だけはまったく着替えようとせず、余裕の笑みすら浮かべていました。聞いてみると「MOTO 2は絶対にない」と。2人以外の全員がグリッドに並んでいるのに、なぜここまで強気でいられるのか。少し疑問でしたが、まぁ、彼らはMOTO 1の成績が良くなかったから、MOTO 2があってもなくても、どちらでもいいのだろうと勝手に思うことに。

そして結局、MOTO 2は中止になりました。

グリッドに並んでいた全員でマーシャルに頼みましたが聞き入れられず、会場の撤収作業がはじまりました。

自分の世界チャンピオンの夢も、ここで終了です。日没という理由で、世界チャンピオンを逃すことがあるのか? 悔し過ぎて涙もでませんでした。

IJSBAに言いたい。デモンストレーションをやっているヒマがあったら、きちんとすべてのレースを消化しなさいよ!! マジで最悪です。マシンが止まった自分にも原因はありますが、なんともやりきれない気持ちに……。

そしてさらに、不可解なことが起こります。

なんと表彰式で、アスファー兄弟のエアロが、耐久レースの世界チャンピオンになっていたのです。どういうこと!?

複雑怪奇な話をまとめてみると、エアロは、ゼッケン3のマシンに乗り、ライジャケはゼッケン119でレースに出場しました。MOTO 1のリザルトは、1位がゼッケン3、エアロはゼッケン119で15位となっていたのですが、ゼッケン3はUAEのライダーではなく、自分だと抗議。なぜか、この主張が認められたようです。

でも、パストレロと自分はエアロを周回遅れにしていたので、そんなことはありえない。みんなも「KOMAが本当のチャンピオンだ」と言ってくれましたが、表彰されてしまったので仕方ありません。なんとも後味の悪い終わり方になってしまいました。

PHOTO:Jin Omura


こうなったらワールドカップでやり返すしかない!! というわけで今回は不本意な世界2位で終わってしまいましたが、たくさんの応援ありがとうございました。

残すはタイのワールドカップ!! 次こそ優勝目指して頑張ります!!

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