K38 JAPANコラム「HOT WATER SAFETY」vol.133|心理学から考える海難事故の予防方法


K38 JAPAN
2008年4月に発足。米国に本部を置くK38の日本支部として、各地で水上バイクによる安全運航および救助・操船技術講習会や、マリンスポーツイベントにおける安全管理などを通じて、水上安全の普及・啓発活動を行っている。


1件の重大な事故の裏には29件の軽微な事故と、300件のヒヤリハット(事故には至らなかったもののヒヤリとしたりハッとするような事例)があるとされています。

これを「ハインリッヒの法則」というのですが、みなさんはご存じでしょうか。

事故の基本的な考え方として知られるもので、小型船舶においても同様のことがいえるでしょう。

そして300のヒヤリハットの背景には、さらに数千を超える「不安全行動」「不安全状態」と呼ばれる危険な行為や状態が存在しています。

たとえば非動力船や遊泳者のいる可能性がある水域を猛スピードで航行していた場合、誰もいなければ危険を感じることもありませんが、そこには「あなた以外の誰かがいる可能性」もあるのです。

そんな場所での高速航行は、不安全な行動といえるのではないでしょうか。

つまり事故を未然に防ぐためには、300件のヒヤリハットを無くすことはもちろん、そうした「事故の芽」となるような不安全な行動を取り除くことが重要になります。

とはいうものの、「絶対に安全」というのはどんな状況でも存在しません。

自然を相手にするマリンスポーツや水上バイクでは、不測の事態が起こる可能性も十分にあります。

ではどうすれば、危険を回避しつつ安全に運航できるのか。

そのヒントは、心理学の分野における「ジョハリの窓」が参考になります。

簡単に説明すると「①自分も他人もわかっている(公然)」「②自分はわかっていないが他人がわかっている(盲点)」「③自分はわかっているが他人がわかっていない(秘密)」「④自分も他人もわかっていない(未知)」という4つの状態(窓)に分類されるというもので、これを海難事故に置き換えると、特に危ないのは④の「未知」でしょう。

危険が迫っていることを誰も把握できていない状態では、安全対策も取れません。

気づいたときには事故が起きている、ということも考えられます。

安全レベルを高めるには①の「公然」を拡大することが重要であり、これがヒヤリハットや不安全行動の防止にも繋がるでしょう。

水上バイクにおいても、その水域を利用するすべてのひとが危険な場所や状況を認識していれば、事前に対策できるため事故の可能性はグンと減ります。

もし何も知らずに危険な状況に陥りそうなひとがいたら、早めに声をかけてあげることも事故を予防するための立派な手段となります。

して船長である操船者だけでなく、同乗者も危険を察知できるようにしておくことがより安全な水上バイクライフを送るための秘訣といえるでしょう。

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