生駒 淳の海外レース参戦記#03│JET SKI PRO TOUR 2019 ROUND 3

2019年5月25日(土)【レース1日目】
猛獣の檻に放り込まれた、か弱い草食動物!?

懸命の作業を続けるメカニック

10時にレース会場へ入ると、マシンはまだ組み上がっていませんでした。どうやら、まだターボは届いていないようです。するとチームから、とりあえずMOTO 1はスペア艇で出てくれと。ん? スペア艇なんてあったっけ? と思って見に行くと、そこにはまさかのEXRが(笑)。いやいや、もう笑うしかないよ!! いくらなんでもGPランナバウトにドストックのEXRで出るなんて……(笑)。

でも午後にはマシンが組み上がるかもしれないし、信じて頑張るしかない!! と自分に無理矢理言い聞かせました。マシンが本調子なら、午後のMOTO 2、MOTO 3、MOTO 4で1位になれるはず。1位と2位の差は7ポイントなので、MOTO 1で1位になったライダーが午後の3レースすべてで2位となった場合を計算すると、自分がMOTO 1で5位以内に入れば、優勝できます。というより、それを目指して頑張るしかないわけです。

午前中も最後のレースとなり、いよいよ自分のMOTO 1です。スタートはアウトの真ん中。まあ、どこからスタートしても一緒ですけどね(笑)。さすがにEXRではスタートで前に出ることも、後ろから追い上げることもできないと思うので、とにかく他のマシンが壊れてくれることを祈るばかり。

ストックのEXRでGPランナバウトクラスを走る生駒 淳

そしてスタートと同時に、予想どおりぶっちぎりのビリ。その後は頑張ってもまったく追いつかず、それどころか上位4艇にはラップされてしまいました。しかも思ったより他のマシンが壊れなかったので、結果は6位に。これでは自分が残り全部1位でも、このレースで1位だったヌレックが残り全部2位になると優勝できません。

となれば作戦的には、ヌレックがスタートでインコースなら、自分も同じインコースに並んでホールショットを獲る。そうすれば、もしかしたらアウトコースのトップが合流で2位で入り、ヌレックが3位になるかもしれない。マシンが本調子なら、この作戦でいけるはずです。しかし、まだマシンが直るかどうかもわかりません。

MOTO 1を見ていた人から、自分より順位が上だったオラファンがミスブイしていたからひとつ順位が繰りあがると言ってくれたのですが、マシンが直るかわからないのに抗議してもなー、みたいな感じだったので、成り行きに任せました。だいたいこういう場合、あの時に言っておけば良かった、みたいな結果になるんですけどね(笑)。

昼休憩を挟んで午後のレースが始まっても、ターボは届きません。まだかまだかと焦っていると、結局2時過ぎに届いて、そこから大急ぎで組み上げ。

3時にはテスト走行までこぎつけたのですが、これが乗ってビックリ‼ まったくもってレースで使えるようなマシンではありませんでした。アクセルを握ってもターボが効くまで5秒ぐらいかかり、しかも回転数が高くなり過ぎるので、ブーストを下げる羽目に。これではターボの意味がありません。

原因は、届けてもらったターボが、壊れたターボよりも大きなものだったことです。これでは自分のマシンに付かないので、配管やハウジングはそのままに、中身だけを大きいタービン(羽根)に変えた感じです。しかも羽根がデカイためそのままではハウジングに入らず、周りを削ったそう。普通なら絶対にやらないことですが、今回は走るために仕方なく……。

こんな事情で、ブイを曲がるためにアクセルを戻すと次のブイまでブーストが効かない、クローズドレースにはまったく不向きなマシンができあがりました。このマシンと午前中のEXRどちらが良いかと聞かれたら、正直なところ微妙ですが、まだ自分のマシンの方がマシ。ターボラグは凄くても、トップスピードは速いと思うので。どっちにするかギリギリまで悩んだぐらい、微妙な選択でしたけど(笑)。

ようやく直った自分のマシンで走る生駒淳

そしていよいよMOTO 2のレースです。自分はアウトコースの1番アウトを狙っていましたが、マシンを交換をしたので選ぶ権利がなく、最後まで残っていたインの大外になってしまいました。スタートでターボラグを解消するアンチラグを使うも、まったくブーストが溜まらず、完全に出遅れ。みんなが1ブイに着くころ、こちらはようやくタービンが回りはじめた感じでした。

とにかくアクセルを戻したら終わりなので、握りっぱなし全開走行のまま3ブイで1艇抜き、合流は4番。目の前でスピンしたポンポンを交わして3位になり、次いでオラファンがストップして2位まで浮上。しかしトップのヌレックは速く、選択コースはインコース不利のため、みんながアウトコースを走るので、なかなか抜けません。

唯一の抜きどころはバックストレートですが、そこで仕掛けるためには、右水面でヌレックの後ろにピッタリ付かないといけません。そのためにはバックストレート手前で草むらをかすめるように走らないといけないため、かなりリスキーです。

4周目ぐらいに、バックストレートでヌレックの横に並びましたが、ヌレックは自分がいることにまったく気付いていなかったので接触の危険があると思い、1度引いてクラッシュを避けました。

そして7周目にもう1度外から被せて抜き去り、ようやく1位に。最終ラップでポンポンがヌレックを抜いたのが見えたので、よし! すべて計画どおりと思ってゴールしたら、なんとヌレックが最後にポンポンを抜き返して2位でゴール。うーん……、そんなに都合良くはいかないか(笑)。

1位でフィニッシュし、ガッツポーズを見せる生駒淳

でもとにかく、このマシンで1位になれたのは本当に嬉しかったし、チームテントに戻った時のみんなの盛りあがりを見たら、頑張った甲斐があったなーと思いました。やっぱりビリから全員抜いて1位になった方が、見応えありますよね(笑)。

ボードを掲げて応援してくれた皆さん

そしてチームテントからスロープまで走っていく最中に、たくさんのギャラリーが拍手してくれて感激。そのなかに『JUN』や『IKOMA』、日本語で『頑張って!』と書かれたボードを持っているひとがいて驚きました。考えてみればウドーンターニーに来てから、写真撮ってくださいと声をかけられることがいつもの比じゃないぐらい多かったかも。テレビで見てくれたのかな? とにかくたくさんの方が一緒に写真を撮りにきてくれて応援してくれて、とても嬉しかったです。レース後はタイヤマハの皆さんにご飯をご馳走になり、この日は終了となりました。
記念撮影に応じる生駒淳

次ページ:【レース2日目】3ポイント差で迎えた最終レース

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