生駒 淳の海外レース参戦記#06│JET SKI WORLD SERIES 2019 ROUND 1

2019年7月5日(金)【レース2日目】
プラランで想定外のトラブル。大ケガを負い、暗雲立ちこめる

ユーロ・ジェットスキー・チャンピオンシップ2019のライダーズミーティング

朝イチにプロクラスのライダーズミーティングがあり、その後、すぐにプラクティスランがありました。プロ・ランナバウトGPは19台もいるので、プラランも大変。誰もが先頭を走ろうと、すでにバチバチなんです。

世界のトップライダーが集結しているだけあって、プラランもちょっと雰囲気が違います。自分はマーシャルのすぐうしろに付いて先頭を走っていたのですが、横から他のライダーがガンガン入ってきます。

そのままマーシャルと一緒に2周回り、マーシャルが居なくなる直前のことでした。自分の目の前にマーカス(#1)が入ってきて、ホームストレートを全開で通過していきました。自分はそのひき波をちょっと左に避けながらホームストレートを通過したのですが、スロットルを全開で握っている最中に突然、左前がノーズダイブして急停止。自分は左前方の水面に叩きつけられ、反動で7mぐらいの高さまで飛ばされ、飛び石のように4回くらい水面を跳ねたようです。

一瞬気を失いかけて水を少し飲んだのですが、幸い足が届く場所だったので溺れずにすみました。でもプロテクター類はすべてどこかに飛んでいったし、体中も、今まで経験したことのない激痛。もう一度マシンに乗ろうとはとても思えないほどの痛みでした。

レスキューがきて「Are you OK?」と聞かれても、答えることすらできません。マシンはノーズダイブしたところからまったく動いていなかったので、120km/hから突然、停止状態になったみたいで、見ていた人たちからは衝撃映像だったと言われました。今までレース中に落水したなかでも、断トツの痛み。ひとまずマシンも自分もテントに戻り、マシンは各部のチェックです。自分はとりあえず椅子に座っていたのですが、左右の肘と肋骨、頸椎の痛みに耐えるので必死でした。

マシンをチェックしてもらったところ、スコープゲートに亀裂が入っていただけで、他は異常が無いということでした。スロットルを全開で握っている最中にいきなりノーズダイブしたことは今まで無かったので、何か原因があるはずだと思い、メカニックのみんなに各部をチェックしてもらったのですが、やっぱり異常ナシ。ゲートの溶接だけしてもらい、ひとまずノーズが食わないようにライドプレートのセッティングだけ変えてもらいました。

そして夕方になり、MOTO 1の時間です。この時間になっても体の痛みは変わらず、とてもレースに出られる状態ではなかったのですが、ここまで来て走らずに帰るわけにもいかないので、海外のすごく効くという痛み止めを飲み、気合いで出場することにしました。

スターティンググリッドはピンポン玉を引き、番号の若い順に好きなグリッドを選べるという方法でした。自分が引いた番号は、19人中12番。選べたのはアウトの外から2番目でした。内側にも外側にも速いマシンだらけです。

プロ・ランナバウトGPクラスのスタート

スタートは、遠隔操作でゴムが切れたらという方法なのですが、タイミングが掴みづらく、一発目はフライングの赤旗でやり直しに。このスタートで自分は完全に置いていかれたので「これは、かなり後方から追いあげるレースになるぞ」と覚悟を決め、グリッドに戻りました。

2回目のスタートは1回目よりもっとバラバラで、誰かが飛びだしたのでそれに釣られてスタートしたひとと、フライングでやり直しになると信じてスタートしなかったひとにわかれました。

自分の経験上、海外では最初にフライングしたひとしかペナルティを科されません。そして、今回みたいに半分近くが飛びだした場合は、赤旗を振らずに続行することもかなり多いです。だから自分がフライングしてもしていなくても、赤旗が見えるまでは全開で走らないと損をします。

そして今回も、やっぱり赤旗はでませんでした。自分でも「嘘でしょ? 赤旗でないの? スタートしなかったひと可哀想」と思うほどのひどい状況でしたが、アウトコースの3番目、合流6番目ぐらいでホームストレートを通過できたので「ラッキー!! このまま絶対に赤旗でるなよ」と思い直しました(笑)。

しかし2周目以降は肘が痛くてスロットルレバーが思うように握れず、息も苦しくて、なかなかペースを上げられません。1台に抜かれてしまったのですが、後半になってようやく薬が効いてきたのか、それともアドレナリンが出てきたのか、だいぶ痛みを感じなくなり、少しずつペースアップできました。

今回のレースは18分+1周と少し長めで、後半になると周りのペースが落ちたこともあり、なんとか2台抜き返して5位でゴールできました。19台フルグリッドで世界のトップライダーが集まるなか、今の状況からすればまずまずの結果だと、正直に思いました。それぐらい体の痛みがひどかったんです。これだけの痛みに耐えながら走って5位だったんだから、明日、体が治ったら絶対1位になれる……。と、このときは思っていました。

そしてフリースタイルを挟んだあとは、耐久レースです。35分+1周で、レース会場の端から端までを使った大きなコースですが、なにぶんダム湖なので、波がほとんど無いのが残念。新型FXはオーシャン耐久をはじめとした波のあるレースで勝ちまくっていて、世界中で波に強いハルということを立証しています。自分の耐久用マシンも2019モデルの新型FXハルにターボを乗せた仕様で、GPマシンが潰れた場合の予備艇としても考えていました。新型FXのVハルはコーナー性能も抜群で、クローズドでも問題なく戦えるんです。とはいっても、体の調子は悪いまま。耐久レースに出るならもう一度痛み止めを飲まないと、35分を走り切れる気がしません。とりあえず何種類かの痛み止めを口に放り込んで、いざ耐久レースへ。スタートは各自マシンのうしろに立ち、合図とともに走ってマシンに飛び乗ります。

耐久レースのスタート前

グリッド決めは他のレースと同じで、7番を引いた自分は、大外が空いていたので迷わずそこをチョイス。スタートの合図と同時に痛みをこらえて走りマシンに飛び乗ったのですが、エンジンがかかりません。結局、エンジンがかかった時には最後尾で、そこからターボを活かして一気に大外からまくって行き、スタートはビリでしたが、1周目のホームストレートまでに4台を抜いて8位で通過。2周目はさらに4台抜き、4位でホームストレートを通過。3周目は4位のままで、4周目にようやくもう1台抜き、3位まであがりました。

前を走るのはあと2台ですが、ここから先がどう頑張ってもまったく抜けず、少し近づいてはミスで離されるを繰り返し、20分ぐらい経過したころで、まさかのマシントラブル。しかも翌日以降の続行も不可能なぐらいのトラブルで、耐久レースはこの時点で終了となりました。

レース終了後は、チームテントでベンジーのご両親が晩ご飯を作ってくれたのですが、笑っても、くしゃみをしても、咳をしてもものすごく痛いので、たぶん肋骨にヒビが入っているんじゃないかということで、早めにホテルに帰って寝ました。

次ページ:【レース3日目】痛みは増すばかり……

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